双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
「どこが痛むんですか? ……頭?」

「晃介、今日がはじめてではないと思う。前回私がお会いした時もあまり顔色がよくなかったの。頭痛もするようだった」
 
葵は彼にそう告げて立ち上がり机上の電話の受話器を取る。

素早く救急救命室のボタンを押した。
二年半のブランクがあっても身体は素早く動いてくれた。
 
救急救命チームの要請を終え大介を見ると、顔色は土気色だが、まだかろうじて意識はある。その彼に、晃介が症状を尋ねている。
 
頭痛、目のかすみ、ふらつきと目眩……。
 
半年前からだという大介の言葉に、葵は息を呑んだ。

それらすべて脳腫瘍の症状だ。しかも正式な診察は受けていないという。

「どうして検査しなかったんですか⁉︎」
 
晃介が思わずといった様子で責めるような言葉を口にする。
 
普通の人ならともかくとして、医師である大介ならそれらを放置することが、どれほどリスクの高いことか知っているはずだからだ。

ましてや彼はそれで妻を失っているというのに。

「……だ」
 
大介が掠れる声でなにか言う。
 
晃介が口もとに耳を寄せた。

「私には……そうする資格が……ない」
 
呟いて、そのまま意識を失った。
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