双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
「高梨部長って別の病院から来られた方なんですか?」

「うん、確か四年前くらいに引き抜かれてきたんだ。白河病院から」

「白河病院から……?」

葵の胸がドキンと鳴った。

「そう。……でも本当のところやめさせられたんだって噂だよ。理事長に逆らったとかいう話で」

その言葉に葵は息を呑む。まさか、こんな近くに、自分と同じ立場の人がいるとは思わなかった。

葵がいた頃もそういう話はチラホラ耳にしたから、それほど珍しくない話なのかもしれないけれど。

「しかもびっくりなのが、高梨部長、理事長の親戚なんだって。従姉妹の婿……だったかな? 血が繋がっていないとはいえ身内でも容赦ないんだね。噂には聞いたことがあるけど、白河病院って怖いところなんだ……って谷本さん、どうかした?」

怪訝な表情で問いかけられて、葵は自分が無意識のうちに険しい表情になってしまっていたことに気がついた。

「う、ううん、なんでもない。私もう行かないと」

「ふふふ、子供さん待ってるもんね」

少し動揺してしまっているのを誤魔化すように言って、葵はそそくさと着替えを終えて病院を出た。

十二月の冷たい風を頬に感じながら、家を目指す。もうあたりは薄暗かった。

いつもなら一旦家に帰ってから保育園へ迎えに行く。

一秒も無駄にできないという気分でこの道を歩くのだが、今日は別だった。
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