双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
夜勤明けの晃介がお迎えに行ってくれているからだ。やることがひとつ少ないというだけで、随分心に余裕がある。

晃介と子供たちと交流させること自体にはもう迷いはなかった。

彼がどういう気持ちで自分たちのそばにいるのかよくわかったからだ。

彼は子供たちにとって唯一無二の父親であり、大切な存在だ。葵が子供たちと彼の絆を断ち切るべきではない。

そしてためには、もう合意書の中身自体はそれほど問題ではないと思うようになっていた。四百万円は大金だ。

でももともとは、自分が学ぶためにかかったお金なのだから、働きながら一生かかっても返せばいい。今はそれができる職場にいるのだから。

今迷っているのは、二年半前の出来事をどう彼に伝えるかということだった。

空白の時間を語る彼の悲痛な声がまだ耳から離れない。

あのつらい日々をもたらしたのが、唯一の家族である父親だと知ったら……?

葵だって同罪だ。

脅されてあなたを信じられなかったのだと告白して、彼に失望されてしまうのがやっぱりとても怖かった。

彼の心が離れてしまうのではと怯えている。

……いつか落ち着いた気持ちで話せる日が来るのだろうか。

子供たちの父親と母親として、彼らを愛する穏やかな日々を過ごしていれば……。

早足で歩く葵の前方に、小さなスーパーが見えてくる。

いつもならお迎えを優先して寄らないけれど、今日は、せっかくだから子供たちが大好きなデザートのりんごを買って帰ろう。

そんなことを考えて、葵はさらに足を早めた。
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