双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
白河病院に勤めていたことのある葵にとっては心あたりのある話だった。
医師の中には患者の名前さえ覚えていない者もいた。

「……あの頃俺、少し疲れてたんだ。病気で苦しむ人を助けたい。ただそれだけを考えて医者になったはずなのにって……。そんな時に葵が入職してきた」

「私……?」

「そう。とにかく患者のことだけを考えてますって顔に書いてある一生懸命な姿に、心が洗われるような気がしたよ。姿を見ていると初心に戻れるような気がして、いつのまにか目で追うようになったんだ」

そう言って彼はまた穏やかな表情に戻る。綺麗な瞳に見つめられて葵の胸がドキンと鳴った。

「で、でも、そんなの私だけじゃないはずよ」

頬が熱くなってしまったのを誤魔化すように葵は言う。

でも本当のことだった。白河病院には毎年何十人という看護師と研修医が新卒で入職する。

誰だってはじめは、医療への志で胸がいっぱいだ。
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