※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「あら――――そうですわね。侯爵家の妻なんて面倒ごとが多そうだし、愛人として生活したほうが楽しめるかもしれませんわ」

「そうだろう、そうだろう? さぁ、アイリーン……」

「だけど、わたくしの他に愛人が居るのは嫌だわ。ロズウェルさま……わたくしだけを見て? わたくしが一番じゃなくちゃ嫌ですわ……」


 あたしはそう口にし、悲しげに瞳を潤ませた。
 ロズウェルはハッと息を呑み、それからしばし押し黙る。


(さて、どう出るかな?)


 この男があたしに対してどこまで執着しているのか、自信があるわけではない。だけど、全く勝算がないわけでもない。
 ロズウェルの手を握り、指を絡めつつ、あたしは物憂げな表情を浮かべ続ける。時折彼を見上げながら、揺れ動く瞳と視線を絡めた。


「――――少し、考えさせてほしい」


 ロズウェルが呟く。


(よし!)


 思わずガッツポーズを浮かべそうになりながら、あたしは満面の笑みを浮かべる。


「良いお返事を、お待ちしておりますわ」


 頬に口づけを一つ、あたしは静かに踵を返した。



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