ストロベリーキャンドル

そこから数分私たちは黙ったままだった…何を言えばいいのかわからない…もしかして私のこと忘れての?冗談だよね…そう思って嶺緒の方を見た…だけど嶺緒の顔は冗談を言っているとは到底思えない顔をしていた。

「嶺緒?私のことわからないの?」

最初に出た言葉はこれだった。考えて出た言葉じゃなかった。嶺緒の顔を見ていたら勝手にこの言葉が出ていた。

「あぁ。わからない。君たちは俺の一体なんなんだ?」

あぁ…本当に私たちのことを忘れてしまったんだ…そう思うと泣けてきた…静かに鼻に涙が通った。隣でおばさんも泣いている…

「先生…呼んでくるね…」

おばさんが部屋から出ていった。

病室で二人っきりになった私は嶺緒にどんな言葉をかければいいのかわからなかった。それに…きっと私は今泣いているんだろう…さっきから涙が流れて来ている。

「なぁ、これ使うか?」

そう言って渡して来たのはティッシュだった。

「うん…ありがとう…」

きっと本当に忘れてしまったんだろう。

「なぁ、俺の名前なんて言うのか?さっきから思い出せねぇんだ」

あぁ…ほんとに…

「あなたの名前は結城嶺緒…」

「結城…嶺緒…か…」

「そう、結城嶺緒」

「お前は?お前の名前」

「私の名前は…崎谷月葉」

「月葉…」

同じ声で名前を呼んできた。悲しくてどんどん涙が流れてくる…
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