ストロベリーキャンドル
・・・・
「じゃあ…これで全部?」
「うん」
事故に遭ってから三週間が過ぎた。相変わらず嶺緒の記憶は戻んないまま。そして、私は今日退院をする。私の怪我は大きくなかったから、三週間で退院できることとなった。
「じゃあお母さん先車戻ってるから、早く来なさいよ」
「わかった!」
お母さんが車に戻るために病室から出ていく。そして私はお母さんと反対の方を歩いていく。
向かう場所はただ一つ…
「嶺緒!!」
私は嶺緒の病室にいった。
「なんだ。お前か」
「嶺緒何してるの?」
「動画見てる。そっちこそ何してるの?今日退院じゃないのか?」
「そう。今日退院。だから嶺緒のところにきた」
嶺緒は記憶喪失になったということもあり、まだ当分は入院してないといけない。そうなると嶺緒と会える時間が減ってしまう。
ただでさえ記憶を無くして、今までの記憶はない。
それは今もずっと悲しいし、辛い。なんなら嶺緒の顔を見るだけで…辛い。でも、今目の前にいる嶺緒は記憶を無くしている。だから、ずっと悲しんでるんじゃなくて今目の前にいる嶺緒とも思い出を作っていきたいと思った。
「いいけど、でも早く行かないとお前の母さん心配しねぇーか?」
「うん。だから少しだけいさせて」
「はいはい」
嶺緒には私と嶺緒が付き合っていることを教えていない。教えたら絶対別れを告げられる。だからこの二週間教えてこなかった。でも、本当はずっと迷っている。
今の嶺緒が知らないということは、付き合っていないことと同じ。嶺緒にとったら苦痛でしかない。ただの幼馴染だと思っている嶺緒。そんな嶺緒に事実を伝えるべきなのか。伝えたらどんな反応をするのか。伝えるべきなのか。それをずっと迷っている。
教えた方がいい。だけど、伝えてしまったら終わり。そんなことくらい私だってわかる。
「母さんから聞いたけど、俺らって誕生日も一緒なんだってな」
「そうだよ。同じ日に同じ病院で生まれた」
「幼馴染だから同じ病院はまだ分かるけど、同じ日はすごいよな」
「本当にそうだよね」
本当にすごいんだよ、私たち。奇跡と偶然が重なり合ったとしか思えない。
「月葉。お前いつ車に戻るのか?」
「あぁーそろそろ戻らないとじゃん。怒られる」
「じゃあな…」
立って病室のドアを開けた…今教えたらどうなるんだろう。今逃したら、チャンスがなくなる。よしっ!
「あのさ、嶺緒」
「なんだよ。お前帰るんじゃなかったのかよ」
「そうなんだけど、一つ言いたいことがあってさ」
「ん?」
「私ね、交通事故に遭う1年半前から嶺緒と付き合ってんだよね…」
「えっ…」
言っちゃった…なんて帰ってくるんだろう。今すぐ病室から出て行きてい気持ちをグッと抑える。
「ごめん。気持ちが追いつかない」