ストロベリーキャンドル

日曜日…私たち4人は病院に来ている…嶺緒に会いに病院に来た。一昨日おばさんが『日曜日になら』と言ってくれた。私はもう、今の嶺緒に会ったことがある…でも三人はないから緊張してるらしい…三人を見てみると凄い緊張してるのか、何を喋っていない。病院に着くと私とおばさんが、嶺緒の部屋まで案内した。

「ありがとう。嶺緒に会いに来てくれて」

「いえいえ、友達ですから」

「ありがとう。流くん」

流はずっと会いたがってた。嶺緒に…

「嶺緒、記憶ないからみんなに強く当たっちゃうかもしれないけど大丈夫?」

「はい!覚悟してきましたので」

「私もです!!」

三人ともちゃんとわかってくれてる…嶺緒のことを…病室の前に着くとなんだか私まで緊張してきた。そう思いながらドアを開けた…

──ガラガラ

「嶺緒!!久しぶり」

勢いよく病室に入った…嶺緒の方を向くと、嶺緒はスマホで動画を見ていた。

「なんだ月葉か。誰かと思った」

「おはよう!元気だった?」

「あーうん」

元気そうでよかった。私が退院した後から初めて会う。そしてなんかちょっと気まずすぎる。

嶺緒に『私と付き合っている』と言ってからだからだ…嶺緒はそのことについてどう思っているんだろう。もうなんも思っていないのかな?

「嶺緒。おはよう」

「母さんと一緒に来たんだ」

「そう」

おばさんが入ってきた。タイミングがいいのか悪いのか分からない…

「後ね嶺緒…ちょっとあって欲しい人たちがいるの…」

「誰?」

そういうとおばさんが廊下にいた流たちを呼んだ。

「ようっ!嶺緒…久しぶりだな…と言っても俺のこと覚えていないよな…」

「誰だ?お前」

「俺の名前は青木流。嶺緒の小学校の時からの親友」

「流…」

やっぱり覚えていないんだ…流の方を見るとやっぱりどこか悲しそうな顔をしていた…

そりゃあそうだよね…親友(?)が記憶喪失になっちゃったんだもん…いくら覚悟をして来たとしても、実際記憶がない嶺緒と会うと悲しくなるに決まっている…

「嶺緒…久しぶり…私は前田輝羅」

「久しぶり…私の名前は佐倉瑠奈。ここにいる私たちは全員小学校の頃からの友達なんだよ」

「輝羅に瑠奈か…分からない。思い出せないんだ」

嶺緒はショックを受けているようだった。

もし自分が嶺緒の立場だったらきっと同じようにショックを受けると思う。こんなに自分を大切にしてくれる人がいて、お見舞いに来てくれるような人がいるのに…何一つとも思い出せないんだから…

「悪い…お前らのことも思い出せない....すまん」

「謝らないで…嶺緒」

「流…お前優しんだな…」

「れ…嶺緒に…優しいと言われる日が来るとは…」

「りゅ…流?」

輝羅が流に話しかけても上の空だった。嶺緒に優しくされたのがそんなに嬉しかったのか?

まーでも確かに嶺緒流に対してツンデレだったからなーたまーーーにデレが出ていた時はあったけどこうやって言われたことはなかったのか?流の様子を見る限りそうっぽいな…流には悪いけど心底かわいそうなやつだと思った

「嶺緒…母さん、杉浦先生とお話ししてくるね」

「あぁ…いってらっしゃい」

おばさんが先生とお話しするために部屋から出て行った。前におばさんが言っていた時間よりも15分も早い。気を聞かせてくれてのかな?

だけどそのおかげで、約一ヶ月ぶりにこうやって5人で集まることができた…

「嶺緒。調子はどう?」

「まぁまぁかな。なんかずっと病院にいるからつまんなくなってきた。早く家に帰りたいな」

「あれこれ一ヶ月、病院生活だもんなー」

嶺緒と流の会話を見ていて、嶺緒に記憶がないと思えないくらい今まで通り変わらなかった。

「病院生活ってどうなの?」

「んー…就寝時間とか決められているからめんどくさいかな」

なんかどんどん嶺緒に質問していく人たち。でも嶺緒も楽しそうだからよかった。

「ねー嶺緒」

「何?輝羅」

「一つ気になったんでけどさ、嶺緒って月葉と付き合っていること知ってるの?」

輝羅…あんた今ここで聞くなよ…

しばらく沈黙の時間が続いた。輝羅の方を見るとやっちまったという顔をしている。誰がこの沈黙の状態を無くすのか…私は絶対に無理…

ちらっと流の方を向くと、『俺!?』という感じで見られた『はぁー』とため息をついて流が口を開けた。

「知ってるよ。だけどまだ俺は混乱している状態」

流よりも先に嶺緒が話した。

だけど、またこの話を嶺緒からされるとまた苦しい思いをしてしまう。

わかっている。嶺緒が混乱をしているということを…

「そ、そうなんだ」

「うん」

瑠奈と輝羅もぎこちない反応になっている…

「そのことについては、もう少し考えさせて」

「うん…わかってる」

わかっている…大丈夫…

──ガラガラ

おばさんが病室に入ってきた。

「嶺緒…退院できるって…」

入ってすぐおばさんがそう言った。

「本当に?」

「えぇ…記憶は元にはも戻らないけど、元の生活に戻っていいって…」

そういうおばさんの顔を見ると少し目元が赤いような気がした。もしかしたら泣いていたのかもしれない。おばさん…よかったね…嶺緒…退院できて、よかったね。

流が嶺緒に抱きつき、嫌がっている。この光景なつかしいな…

輝羅と瑠奈の方を見ると二人とも笑っている。その様子を見て、私は少しうるっときてしまった。

おばさんの方を見るとおばさんの顔が今にも泣きそうな顔をしていた。嬉泣じゃない。どっちかと言ったら、悲しそうな…そんな顔をしていた…なんでだろうと思ったけど、気のせいだなと思って、また嶺緒の方を向いた。この時の私は、知りもしなかった…

おばさんが泣いていた本当の理由を…
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