Cherry Blossoms〜潜入捜査官と天才医師〜
「反応なし。ちょっと失礼します」

女性はグッタリとして動かない女性の胸にパッドをつけていく。心電図のパッドだ。

その時、女性が突然嘔吐した。様子を見ていた人たちから悲鳴が上がる。桜士はすぐに窓ガラスをノックした。

「すみません!その症状はーーー」

「……急性硬膜化血腫です!」

女性が車のロックを解除する。桜士はすぐにドアを開け、嘔吐した女性の状態を見る。かなり悪い状態だとわかった。

急性硬膜化血腫とは、頭部外傷によって引き起こされる病気だ。頭蓋骨の内側で脳を包む膜(硬膜)と、脳の表面に血液(血腫)が溜まっていき、脳を圧迫してしまう。命を落とすこともある危険な病気だ。

「私は医者です。あなたはお医者さんですか?それとも看護師さんですか?」

女性が自分の持って来たかばんの中から、注射器などを取り出しながら訊ねる。桜士は女性が持っている器具たちに少し驚きつつ、「僕は医者です」と答える。

「あの先生、これから何をするつもりなんですか?何でそんな手術用の器具なんて持ってるんですか?」
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