Cherry Blossoms〜潜入捜査官と天才医師〜

まるで、この場所で手術でもするんじゃ……。桜士が顔を引き攣らせながら訊ねると、女性は麻酔を注射器の中に入れながら「ここで手術します」と答える。

「はぁ！？」

高性能な機械が何もないこの環境で手術など、患者の命を危険に晒すも同然だ。だが、驚く桜士に見向きもせず女性は着々と準備を進めていく。

「この方の症状の進行は驚くほど早いです。救急車の到着を待っている間に最悪の事態を迎えてもおかしくありません。なので、今ここで血腫を取ります！」

「えっ、ええっ！？」

冷静沈着と言われている桜士も、彼女の発言には混乱してしまう。だが、彼女は麻酔薬を注射し、頭皮をメスで切開し始めてしまった。こうなってはもう後戻りはできない。

「ぼ、僕も手伝います！」

桜士は素早く頭蓋骨に穴を開けるドリルを手に取り、穴を開け始める。その時、女性が心電図を見て「心停止！」と叫んだ。桜士が見ると、心電図は脈打っておらず凪いでいる。