Cherry Blossoms〜潜入捜査官と天才医師〜
「華々しい、ね……」

桜士は小さく呟く。もしも本当に医者だったのなら、そうなのだろう。男性の医者は合コンに行けば多くの女性が擦り寄り、命を救うことに感謝され、高収入な仕事だ。だが、救急救命医・本田凌は仮初めの姿なのだ。

(俺も、最初は素直に人の命を救いたかったんだけどな)

人の命を救いたい、その思いで桜士は医学部に入学し、一生懸命勉強をして国家試験にも合格した。だが、それと同時期に会社を経営していた父親から頭を下げられたのだ。

「桜士、すまない……!私は騙されてしまった。もう終わりだ……」

父親の経営する会社に、中途採用としてある男性が就職した。だが、その男性は実は海外から派遣されたスパイで、父の会社の技術を何もかも奪った後、逃げられてしまったのだ。その時、スパイに対して怒りを覚えた桜士は医師ではなく公安警察という道を選んだのだ。

「華々しい、ですか……」

一花はそう呟いた後、聖のお腹を思い切り殴り付ける。聖は意識を失い、その体を支えながら寝かせ、一花はこちらを向く。その目には、いつものような明るさはなかった。
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