ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜
第1章 ゲームの始まり

第1話 11月4日


 ふいに画面が光った。
 帰る支度をしていた小春(こはる)は、机の上に置いていたスマホを手に取る。

 新着メッセージの通知だった。
 送信者は“ウィザードゲーム運営”。

(ウィザードゲーム……?)

 聞き覚えのない響きに、訝しむように眉をひそめる。
 そのとき、リュックサックを背負った(れん)が歩み寄ってきた。

「帰ろうぜ、小春」

「あ、うん!」

 頷いてスマホをしまい、鞄を手に立ち上がった。
 教室を出ると、放課後の喧騒(けんそう)に包まれる廊下を歩いていく。

「部活は? 今日もないの?」

「ああ、しばらくは休むから。……そのうち戻るって。心配すんな」

 たたえられた苦笑は実にらしくなくて、小春は釈然(しゃくぜん)としない思いで顔を曇らせる。

 彼と初めて会ったのは、中学校に上がる年の春休みだった。
 そのとき近所に越してきて、未だに腐れ縁が続いている幼なじみという関係だ。

 サッカー部に所属している蓮は、かれこれ1か月くらい前からずっと休部していた。

 中学の頃からサッカー部のレギュラーで、高校でも活躍しているという話をよく聞いていたのに、なぜか突然休部してしまったのだ。
 誰が聞いても適当にはぐらかされるだけで、理由は教えてくれない。

 部活に行かなくなった代わりに、こうして朝も帰りも一緒に登下校するようになった。

 その理由もまた、彼が教えてくれることはなかった。

 そのとき、反対側から歩いてきた男子生徒と目が合った。

「あ、水無瀬(みなせ)向井(むかい)。また明日な」
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