ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜

 目を見張った小春に、蓮は神妙な面持ちで頷く。

「今朝見た彫像だけど、あれは本物の和泉の腕だ。あいつがあの腕時計つけてるとこ見たことあるし」

「うそ……」

「犯人はたぶん“石化魔法”か何かを使う魔術師。でもって、ゲームを楽しんでる」

 そうでなければ、殺した相手の腕をあんなふうに晒したりしない。

 どういうつもりなのだろう。
 力の誇示(こじ)か、それとも見た者の反応を窺っているのか。

「少なくとも近くにいるのは確かだな。魔術師だってバレたら、次にああなるのは俺たちかも」

 ぞくりと背筋が冷えた。
 鋭い(きば)を隠した魔物が、すぐそこにいるかもしれないという恐怖を覚える。

「……んな不安そうな顔すんなって。ビビらせて悪かったよ。大丈夫、そうならないために話してんだから」

 蓮は強気に笑った。
 見慣れたその笑顔は、何よりも安心感をくれる。

「魔術師は基本的に自分以外、誰が魔術師なのか分かんねぇ。だからそう怯えることはねぇよ。見分けられる異能もあるらしいけどな」

「そうなんだ……。どんな能力なんだろう」

「さあな。それ以外でバレるとしたら、普通に能力使ってるとこ見られたりして奇襲かけられるとか。……たぶん、和泉はそのパターンだと俺は思う」

 彼は恐らく、もう無事ではないのだろう。

 異能や命懸けのゲームと同じくらい、同級生の死というのも信じがたいものだった。
 つい昨日の放課後まで元気な姿を見ていたし、会話も交わしていたからこそ余計にそうだ。

「……先生に言わないと」

 ホームルームでの担任の言葉を思い出した小春は言う。

「なんて言うんだ? 和泉が石化して死んでる、って? そんなの誰が信じるんだよ。犯人に目つけられるだけだぞ」

 和泉には申し訳ないけれど、同じ(てつ)を踏まないためには、知らないふりをして傍観者でいるしかないのだ。

「……まあ、つってもメッセージにもあったように、魔術師じゃねぇ奴を殺すとペナルティがある。よっぽど確信がない限り襲われねぇよ」

 だからこそ、魔術師であることは隠しておいた方が身を守る上で得策なのだ。

 そういう意味では、ほかの魔術師も基本的に自ら大っぴらに明かすことはしないだろう。
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