ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
ほとんど会話もないまま学校へ到着した。
“名花高等学校”と書かれた校門を潜り、昇降口で靴を履き替える。
「ねぇ、それで────」
ウィザードゲームについて詳細を尋ねようとした小春だったが、しっ、と蓮に制された。
蓮は周囲を見回す。校門からの道のりも昇降口も廊下も、登校してきた生徒たちで賑わっている。
「迂闊に言わない方が良いぞ。つか、言うな」
何を、と言われずとも分かった。小春は気圧されるような形で頷く。
さらに声を落とした蓮が続けた。
「説明は昼休みにするから、とりあえず普段通りでいるんだ」
「……分かった」
教室へ入ると、蓮は男子の友だちの元へ向かった。
なるほど談笑する姿はあまりに自然で、異様な出来事などすべて忘れてしまったかのようだった。
「おはよー、小春ちゃん」
声を掛けられ、小春は振り向いた。そこにいたのは、クラスメートの胡桃沢瑠奈だった。
「あ、おはよ」
蓮ほどではないが、それなりに交友関係の広い小春は瑠奈とも交流を持っていた。
いつも一緒に行動する、というほどではないが、ともに弁当を食べたり、放課後に遊びに出掛けたりしたことはある。
「今日も蓮くんと一緒に来たの?」
瑠奈はふわふわのツインテールを揺らしながら首を傾げる。
小春は苦く笑いつつ頷いた。
「うん、そうだよ」
「帰りも一緒なんでしょ? お陰で小春ちゃん、あたしと遊びに行けないんだけどー」
瑠奈は、じとっと遠目から蓮を軽く睨んだ。当の本人は気付いていない。
「愛されてるのは分かるけど、大変だね……束縛彼氏は」
「彼氏じゃないってば。ただの腐れ縁だよ」
「えー、そう?」
「そうだよ! 何で毎日こうも一緒にいるのか……」
瑠奈の誤解(というか、からかい)のお陰で小春も蓮に倣い、普段通りに振る舞うことが出来た。
くすくすと楽しげに笑う瑠奈。一瞬、鋭くなった眼光に小春は気付かない。
「心当たりはないの?」
普段より若干低めの声で、ぽつりと呟くように瑠奈が尋ねる。
「え?」
「ほら、いつもと違うことがあったとか」