ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜
「普段通りにするべきなのはそのためなんだね。下手に警戒したりすると逆に怪しまれるから……」
「そうだな。ウィザードゲームって名前も、検索しても出てこなかったろ。その名前を知ってる時点で魔術師だってバレる」
「そっか、だから口にしない方がいいって」
こくりと頷いた蓮は真剣な表情で続ける。
「……っつーことで、改めて大枠を説明するけど────」
基本的にはメッセージの内容通りだ。
魔術師に選ばれた者はほかの魔術師を全員倒し、唯一の生き残りを目指す。
そうすれば、12月4日に殺されずに済む。
言わば、異能によるバトルロワイヤル。
魔術師に選ばれた者のみが、プレイヤーとして戦う権利を得られる。
────蓮としては正直なところ複雑だった。
小春が魔術師に選ばれたことで、彼女自身が単なる部外者で終わるということはなくなった。
“機会”が与えられたのはよしとして、しかしそれは同時に危険も倍増したことを意味する。
「どう動くかは自分次第って感じかな。運要素もだいぶ多いけど」
「運?」
「そう。あのガチャでどんな異能を得るか、何を失うか……。そもそも、あのメッセージを受け取れなきゃほぼ詰み」
言いたいことは小春にも分かった。
メッセージを受け取れなければ、魔術師になれなければ、12月4日の惨劇を知る由もなく、異能も得られないために戦う機会すらない。助かる術はない。
「選ばれたんだよな、俺たち。誰かに選別されてる」
「選別……」
選ばれなかったら、不運を呪って死ね、ということだ。
なんて救いようのない身勝手なゲームなのだろう。改めて嫌悪感を抱く。
「なあ、アプリの画面見たっつったよな。スロットがあったの分かるか?」
蓮の問いかけに頷いた。
それほど複雑な作りではないものの、画面を見せ合ってはならないという制約はやや煩わしいものだった。
「異能はひとり5個まで保有できる。画面のスロットに保存されてるのが自分の持ってる能力だ。……まあ、つっても5個埋めるのは現実的じゃねぇな。多くてもせいぜいふたつくらいか」
「どうして?」
「そんなにガチャ回したら死ぬだろ。代償を払いきれねぇ。殺して奪うってのも簡単じゃねぇし。倫理観とかの問題だけじゃなくて、まず魔術師かどうかを特定するのが難しいんだよ」
ペナルティというシステムが存在する以上、どんな残忍な人が魔術師に選ばれても“無差別異能殺人”なんかはできないわけだ。
小春はそっと安堵する。
ゲームと無関係な人たちが巻き込まれることはなさそうだ。