ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜
第13話 11月20日
◇
◆
◇
廃トンネルには5人の人影があった。
学校を抜け出して集まった奏汰、大雅、瑚太郎、アリス────そして蓮の表情は一様に暗い。
「今朝のホームルームで、陽斗と昨日から連絡がとれないって……」
瑚太郎の言葉に「ああ」と大雅は頭をもたげる。
「……陽斗と繋いでたテレパシーも切断された。殺されたんだと思う。たぶん、祈祷師かその仲間に」
悲しみも戸惑いも追いつかず、硬い声色で淡々と言う。
動揺はそれだけに留まらなかった。
「……小春は?」
今日は彼女の姿まで見えない。
大方、事情を把握しているだろうと踏んでアリスが蓮に尋ねた。
けれど、彼は蒼白な顔で俯くだけだった。
「分かんないんだって。連絡もとれなくて」
代わりに奏汰が答える。
「帰りは一緒じゃなかったのか?」
「……途中までな。踏切で分断されて、電車が通り過ぎたらいなくなってた。捜し回ったけど、どこにもいない」
家にも姿はなかったものの、出迎えてくれた彼女の母親に、小春からだというメッセージを見せられた。
“友だちの家に泊まりにいく”という内容で、時刻は18時34分。
それ以降は何の音沙汰もない。
「なあ、テレパシーは? 繋がってるか?」
「それが……」
大雅は難しい表情を浮かべる。
小春とのテレパシーは、少し妙な状態だった。
「繋がってると言えば繋がってる。……けど、なんつーか変な感じなんだ。互いに声が届かねぇ」
「どういうことだよ?」
「俺にも分かんねぇ。こんなの初めてだ」
まさしく“オフライン”のような状態になっているのだ。
テレパシー自体の切断はされていない。それでも、声が届かない。
「……消えたってことは、瞬間移動させられたのかも」
「だとしたら、相手は祈祷師と如月くんかな」
────冬真の“琴音殺害”という目的にに協力した祈祷師。
彼はただ者ではない。
聞く限り、ありとあらゆる異能を扱うことができる。
「……やられたって言うのか? 小春が」
「まあ、単独じゃ対抗手段もないしなぁ。言うても空飛べるし、逃げられるはずやけど」
その言葉は、蓮にとって希望的観測のように感じられた。そうだといい。
小春の身に何かあったのだとしても、逃げて無事ならそれでいい。
「でも、逃げたなら蓮や俺に連絡とるんじゃねぇか? つか、俺らと合流するだろ」
大雅の真っ当な意見には、蓮もうなだれるしかなかった。
ついネガティブな想像へ枝を伸ばしかけて、慌ててかぶりを振る。
希望が潰えたわけではない。
テレパシー自体は切断されていないのだ。生きている可能性は十分にある。
(……いや、生きてるに決まってる。俺の知らねぇとこで死なせてたまるかよ)
蓮は固く口を結び、拳を握り締めた。
「なあなあ、ところでうららはどうなったん?」
救出に失敗し、冬真のもとに置き去りになっている彼女。
大雅は答える。
「無事だ。けど、完全に人質に取られたな」
そういう意味では、命の保証はされている。
しかし、彼女を生かしていることには意味があるはずだ。
冬真はまた、何かを企んでいる。
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廃トンネルには5人の人影があった。
学校を抜け出して集まった奏汰、大雅、瑚太郎、アリス────そして蓮の表情は一様に暗い。
「今朝のホームルームで、陽斗と昨日から連絡がとれないって……」
瑚太郎の言葉に「ああ」と大雅は頭をもたげる。
「……陽斗と繋いでたテレパシーも切断された。殺されたんだと思う。たぶん、祈祷師かその仲間に」
悲しみも戸惑いも追いつかず、硬い声色で淡々と言う。
動揺はそれだけに留まらなかった。
「……小春は?」
今日は彼女の姿まで見えない。
大方、事情を把握しているだろうと踏んでアリスが蓮に尋ねた。
けれど、彼は蒼白な顔で俯くだけだった。
「分かんないんだって。連絡もとれなくて」
代わりに奏汰が答える。
「帰りは一緒じゃなかったのか?」
「……途中までな。踏切で分断されて、電車が通り過ぎたらいなくなってた。捜し回ったけど、どこにもいない」
家にも姿はなかったものの、出迎えてくれた彼女の母親に、小春からだというメッセージを見せられた。
“友だちの家に泊まりにいく”という内容で、時刻は18時34分。
それ以降は何の音沙汰もない。
「なあ、テレパシーは? 繋がってるか?」
「それが……」
大雅は難しい表情を浮かべる。
小春とのテレパシーは、少し妙な状態だった。
「繋がってると言えば繋がってる。……けど、なんつーか変な感じなんだ。互いに声が届かねぇ」
「どういうことだよ?」
「俺にも分かんねぇ。こんなの初めてだ」
まさしく“オフライン”のような状態になっているのだ。
テレパシー自体の切断はされていない。それでも、声が届かない。
「……消えたってことは、瞬間移動させられたのかも」
「だとしたら、相手は祈祷師と如月くんかな」
────冬真の“琴音殺害”という目的にに協力した祈祷師。
彼はただ者ではない。
聞く限り、ありとあらゆる異能を扱うことができる。
「……やられたって言うのか? 小春が」
「まあ、単独じゃ対抗手段もないしなぁ。言うても空飛べるし、逃げられるはずやけど」
その言葉は、蓮にとって希望的観測のように感じられた。そうだといい。
小春の身に何かあったのだとしても、逃げて無事ならそれでいい。
「でも、逃げたなら蓮や俺に連絡とるんじゃねぇか? つか、俺らと合流するだろ」
大雅の真っ当な意見には、蓮もうなだれるしかなかった。
ついネガティブな想像へ枝を伸ばしかけて、慌ててかぶりを振る。
希望が潰えたわけではない。
テレパシー自体は切断されていないのだ。生きている可能性は十分にある。
(……いや、生きてるに決まってる。俺の知らねぇとこで死なせてたまるかよ)
蓮は固く口を結び、拳を握り締めた。
「なあなあ、ところでうららはどうなったん?」
救出に失敗し、冬真のもとに置き去りになっている彼女。
大雅は答える。
「無事だ。けど、完全に人質に取られたな」
そういう意味では、命の保証はされている。
しかし、彼女を生かしていることには意味があるはずだ。
冬真はまた、何かを企んでいる。