ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜

「……状況を整理しようぜ」

 険しいほど真剣な面持ちで蓮が言った。

「いまの俺たちの敵は、祈祷師と如月冬真たちで合ってるか?」

 その中にはヨルも含まれていると悟り、瑚太郎は肩をすくめる。

 大雅はそんな彼を一瞥(いちべつ)した。
 冬真の一味であることは、まだ言い出せていないようだ。

「祈祷師って何なんだろうね。如月くんたちと手を結ぶってことは、魔術師の敵とも言いきれないし……」

「何で僕たち狙われるの?」

 奏汰と瑚太郎の言葉は、この場の誰もが抱える疑問だった。
 答えなんて持ち合わせていない。

「……なあ、これからどうする?」

 アリスは神妙な面持ちで、誰にともなく尋ねた。

「俺は小春を捜したい。生きてても……そうじゃなくても」

 それを受け、やや面食らった彼女は呆れたようにため息をつく。

「はぁ……。また“小春”か」

「何だよ?」

「うんざりや。口を開けば小春、小春って。あんたの頭ん中、あの子のことしかないんか?」

「……あ? 心配してるだけだろうが」

「だからそれが過剰や言うてんの。心配するんは勝手やけど、あたしらを巻き込まんといて」

 ただでさえ小春の善人ぶりには嫌気がさすのに、過保護な蓮の態度がそれを助長させていた。

 小春のためなら命をも惜しまないという信念にも共感はできないし、そもそもアリス自身がそこまでする義理はない。

「そんな言い方……」

「あたしら“仲間”なんやろ? だったら、ひとりひとり行動に責任持ってくれんと困る。嫌でも巻き込まれるんやから」

 なだめるように割り込んだ奏汰だったけれど、アリスは怯まず続けた。

「俺はただ────」

「あんたの仲間は小春だけか? ちゃうやろ。だったらもっと周り見てや。……別に、小春を大切にするのが悪い言うてんとちゃうからな」

 アリスの言葉は予想外のところに着地した。
 彼女が“仲間意識”というものを持ち合わせていることにも驚いてしまう。

「おう……。そうだよな、悪ぃ」

「そんで? それでも小春のこと捜すんやな?」

「ああ。悪いけど、いまはそれ以外考えらんねぇ。みんなに付き合ってくれとまでは言わねぇから。それぞれ動いてくれ」

 決然と告げた蓮に、奏汰はすぐさま「いや」と言った。

「俺は手伝うよ。小春ちゃんのこともだけど、蓮のこともほうっておけないし」

「俺も。このままじゃばらばらになるだけだ」

 大雅が続き、瑚太郎も頷いてくれる。

 どのみち、いまの全員の精神状態では、意をともにして運営側を倒すなんて空論(くうろん)でしかない。

「分かった」

 ────アリスが頷くと、大雅は紗夜とコンタクトをとった。
 ほどなくして彼女も廃トンネルに姿を現す。

「わたしも一緒に動く」

 小春捜しに協力するというより、全員の判断に追従(ついじゅう)するという意味だろう。

 同志であるうららが敵に人質に取られた状態で、紗夜ひとりにできることなんてない。

 同盟を組んだ自分たちのもとへ転がり込むのは必然だろうと、アリスは思った。
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