ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜

「おっけー。じゃあさっそく捜しにいく感じでええか?」

「ああ、いますぐ行こう」

 かくして6人は動き出した。

 瞬間移動させられているとすれば、見つけ出すのは至難(しなん)(わざ)だけれど、だからと言って諦める理由にはならない。

 手分けした方が効率的かもしれないが、いまは固まっていた方がいいように思えた。



 ひと通り歩き回ったものの、午後になっても何の成果も挙がらなかった。

 覚悟していたけれど、つい悲観的になってしまう。

「……思ったんだけど、祈祷師とかも殺しちゃだめなの?」

 ふと、瑚太郎が口にする。

 小春の掲げた理想と信念を思い出しているのだろう。
 彼女は“魔術師同士で殺し合うこと”を禁忌(きんき)として止めようとしていた。

 けれど、祈祷師が対象ならどうなのだろう。
 魔術師でない彼らのことは、殺すのだろうか。

「……正直、いいか?」

 大雅は顔を上げ、全員を見回した。

「こうなった以上、悠長(ゆうちょう)なことは言ってらんねぇ。まず自分を守ることを第一に考えねぇと、あっさり殺られる。小春の考えを否定するつもりはねぇけどな」

 蓮は複雑な表情を浮かべた。

 できる限り、小春の考えを尊重してその意思を貫き通したい。
 けれど、大雅の言うことにも一理ある。

 要するに、自衛の手段として“殺し”を解禁しようという主張だ。
 祈祷師は無論のこと、相手が魔術師であっても。

「せやな。殺るか殺られるかやろ? しゃあないって」

 真っ先に賛同したのはアリスだった。

 もともと小春の信念を渋々受け入れていたことだし、ごく自然な反応だった。

「なあ?」

「えっ? あ……うん。そう、かも」

 同意を求められた瑚太郎はとっさに頷く。けれど、それが本心だった。

 仕方がないのだ。
 殺さなければ、自分が死んでしまうのだから。

「そういうことなら、わたしも……。とりあえず賛成」

 紗夜が言った。
 少なくともうららを取り返すまでは、甘いことは言っていられない。

「…………」

 奏汰は黙って蓮を窺った。
 仲間内でどんな意見が多数派になろうと、こればかりは彼に合わせるつもりだった。

「……そうだな」

 蓮は俯いていた顔をもたげる。
 殺気立ったような鋭い眼差しで遠くを捉えた。

「俺も、小春に何かあったら……相手を殺してやる」

 半分は自棄(やけ)になっていた。残りの半分は、どうにか割り切った結果だった。

 小春が生きていると信じるなら、どうにかして彼女を見つけて守らなければならない。
 その役目は自分にしか負えない。

 だから、死ねない。
 何がなんでも────。

 彼女が知ったら、恐らく怒るのだろう。
 それならそれで構わない。生きていてさえくれれば……。

 奏汰はただ頷いた。
 蓮の選択を、褒める気も責める気も起きなかった。

「なあ、小春が冬真のもとにいるってことはねぇか?」

 蓮は大雅に尋ねた。
 自然と、すっかりその可能性を失念(しつねん)していた。

 もし、そうなら────連絡がつかない理由にも、自分たちに合流しない理由にも合点がいく。

 彼らと手を組んだ祈祷師に瞬間移動で(さら)われ、うららのように絶対服従させられているということだ。
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