ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜
     ◇



「さてと……」

 帰路につき、ひとりになったアリスは腕を組む。
「如月冬真は抜かったな。桐生なんてさっさと殺しとけばよかったのに。あー、如月のとこ行かんで正解やったわ。でもなぁ、向井んとこおってもメリットないしな……」

 ひとり呟きながら、現状を整理していく。

「脳内お花畑の水無瀬が消えれば、魔術師ども殺せるし、もっと色々スムーズになるかと思ったのにそうでもないなぁ。結局“考え”とやらも分からずじまいか」

『考えてることがある。もう少しだけ待ってくれないかな……? 口だけでは終わらせないから』

 小春のみぞ知るその考えも、彼女が姿を消したいま、分かりようがなかった。

「向井は水無瀬捜ししか頭にないみたいやし、ほかの連中もほぼ空気。唯一使えそうなのは桐生やけど、あいつが如月と切れたいま、向井たちと離れる選択なんかするわけあらへん。……それにどういうわけか、あいつらには敵が多すぎる」

 そもそも大雅自身はよこしまな野望なんて持ち合わせていない。
 この先、蓮たちと反目(はんもく)することもないだろう。

 また、有能な魔術師が味方にいるとしても、いたずらに敵が多いのも事実だった。

 大それた目的に命を懸けることに、アリスは未だに確かな価値を見出せていない。

「こうなったら、かくなる上は噂の八雲至やな。如月を戦闘不能にした張本人────いまの“最恐”は、間違いなくあいつや」

 このまま行方を(くら)ましてしまえば、くだらない仲間ごっこに付き合う必要もなくなる。

 彼らとは決別して、至に取り入れば安泰(あんたい)だろう。

 大雅とのテレパシーを切断すると、弾むような足取りで歩き去っていった。
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