ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜
第3章 残酷な再会

第15話 11月24日


 週末から小春捜しに(いそ)しんでいるものの、いまのところ手がかりも収穫もゼロだった。

 午後を回った頃、休憩を兼ねて学校近くの公園へ立ち寄る。
 ベンチに腰かけた蓮は深く息をついた。

「……あれから数日経ってるし、難航(なんこう)して当然だよ」

 蓮のやるせない思いを察し、瑚太郎が励ますように言う。
 奏汰も続いた。

「小春ちゃんより先に失踪(しっそう)してる胡桃沢さんも安否不明だけど、遺体は上がってない。“失踪”っていうパターンをたどってるなら希望はあるはず」

 ふたりの言葉を受け、蓮は神妙な面持ちで頷く。

「そうだよな。祈祷師に殺られた琴音は……消えたりしなかったし」

 消えたと言えば消えたのだけれど、それは死が確定してからだ。

 祈祷師は既に魔術師たちの前に姿を現している。
 いまさら姿を隠す必要はないし、殺す気ならその場で手を下すはずだ。

 その痕跡を消して隠匿(いんとく)する必要などない。
 小春が消える必然性なんてない。

(ん? “消える”……?)

 蓮はふと思いついたように眉を寄せる。

 そのとき、じゃり、と砂を踏み締めるような音がしたかと思えば、大雅が姿を現した。

「……あ、見っけ。進捗(しんちょく)は?」

「小春ちゃんの方はいまのところ手がかりなし。八雲くんもまだ……」

「そっか」

 大雅は短く答え、ブランコを囲む鉄の柵に座る。

 真剣な表情で少し口をつぐんでいたものの、やがて切り出した。

「あのさ、そもそもなんだけど。小春が消えたの、祈祷師の仕業じゃねぇんじゃねーかなって」

 奏汰と瑚太郎は訝しむように首を傾げる。
 その一方で蓮はぱっと顔をもたげた。

「俺も……思った。瞬間移動させられたんだって思い込んでたから、つい祈祷師と結びつけちまってたけど」

 蓮は一度言葉を切る。
 ただの希望的観測だ。願望だ。それでも────。

「消えた、ってことはさ……至の仲間の魔術師の仕業じゃねぇか?」

 驚きをあらわにする奏汰と瑚太郎に対し、大雅は頷く。
 まさに言わんとすることだった。

「でも、だとしたら腑に落ちねぇのはやっぱり連絡を絶ってることだよな。……まさか、至に眠らされてんのか?」

 大雅は思案顔で憶測を口にする。

 ありえない話ではなかった。むしろ、それなら合点がいくような。

「なら、八雲くんは敵なのかな。仲間になってくれたら心強いと思ったのに」

「何とも言えねぇな。至の行動は腹の底が読めない」

「……けど、ちょっと安心した。よかった、眠らされてるだけなら生きてるよな」

 蓮はほっと安堵の息をついて言う。
 心配なことに変わりはないけれど、希望の光が増した。

「蓮」

 ふと、大雅が硬い声で呼ぶ。

「至を見つけたらどうする気だ? もし、あいつが悪意ある人間で、本当に小春を眠らせてたとしたら。……殺すつもりか?」
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