ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜
自衛の手段として“殺し”の受容を提案したのは大雅自身だった。
けれど、やはりいまやそれが正しいとは思えなくなっていた。
運営側を否定するくせに、彼らが強いたルールだけは尊重するなんて虫がよすぎる。
蓮は、ほかのみんなはどうなのだろう。
あのときは賛同してくれたけれど、いまは────。
「……いや、殺さねぇ。ちょっと、冷静になれた。小春の言葉、俺が破るわけにいかねぇよな」
ややあって返された言葉に、大雅は少し気を抜くことができた。
それぞれも同調するように頷く。
「こうなったらやることはひとつ。八雲至を見つけ出す。そうすれば、自ずと小春も見つかるはず」
小春の生存という可能性、そのビジョンが何となく明瞭になる。
「それで……できるなら、至は味方に引き入れたい。その仲間も一緒に」
大雅が言葉を繋ぐ。
現状、至がどちら側なのか分からないものの、冬真を眠らせて自分を助けてくれたことから、望みはあるだろう。
奏汰が「そうだね」と同意する。
大雅の主張に関して誰も異議はない。
「……っし、改めていいか」
蓮は立ち上がり、決然と告げる。
「おまえらも約束してくれ。誰も殺したり、傷つけたりしない。いいな?」
◇
「あれれれ? またしても雲行き怪しいんじゃないの?」
祈祷師は顎に手を当て、小首を傾げる。
そう言いながらも口元には興がるような笑みが浮かんでいた。
「ミナセが消えたら今度はムカイかぁ……。面倒な連中ね」
「そういう“ばかげたこと”考える奴らはほかにもいるよ。ま、何人現れようが関係ないがね。全員殺せばいいんだ」
呪術師にそう返された霊媒師は、不服そうに髪の先をいじる。
「運営が干渉しすぎると、ゲーム性が損なわれるんだけどなぁ。……まあ、仕方ないか。健全なプレイヤーの快適なゲーム進行を妨げたら、元も子もないもんね」
「……おまえはゲーム運営にのめり込みすぎだ」
さすがの陰陽師も呆れたように口を挟んだ。
「ま、運営の意に沿わない連中はぶっ殺ってことで……いいよね?」
確かめるように尋ねた祈祷師に、陰陽師は首肯する。
「……それと、あたしらを嗅ぎ回ってる奴らがいるね。そいつらにも釘を刺しとくか」
「こっわー。あくまで脅かす程度にしてよ?」
「けど、そのふたりもムカイの一味だ。攻撃を仕掛けて確かめてみるよ。だめそうなら殺す」
呪術師はしなやかな指で首をなぞった。
気迫そのままに、ふっと姿を消す。
(うーむ……)
何かを考えるように口をつぐんでいた祈祷師は、ふとひらめいて笑みをたたえる。
機嫌よさげに、彼もまた姿を晦ました。
◇
百合園家に集まった紗夜とうららは、家の伝手も利用しながらアプリの解析を試みていた。
しかし、ことごとくエラー表示が続く。
海外のサーバーを複数経由しているというわけでもなく、何らかの超自然的な力が働いているとみた方が正しそうだ。