ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜

 勢いよく顔を上げ、思わず瑠奈を見た。動揺で瞳が揺れる。

「あたしとしては“黒”だと思ってるよ。和泉くんの腕を見たときの反応からしてもね」

 あのとき、近くに瑠奈もいたのかと驚いた。それと同時に合点がいく。

 魔術師は互いに面識がなく、基本的に見分けられないと蓮は言っていた。

 だからこそ、瑠奈は罠を張っていたのだ。
 彼女の言う通り、あの彫像を見た蓮の反応は尋常ではなかった。

「蓮くんは怖いんじゃないかな。ほかの魔術師と戦うのが」

 瑠奈はステッキを指先で撫でる。

「急に小春ちゃんのそばから離れなくなったのも、蓮くんがゲームに巻き込まれたからだって考えれば色々と辻褄が合うし」

 サッカー部でトラブルが発生してふたりがばらばらになったのは、偶然とはいえ瑠奈にとって幸運だった。

 小春は心の底から後悔した。蓮の言う通り、あのまま待っていればよかった。

 あれほどに彼が過保護になっていたのにも、いまなら頷ける。

 敵がどこにいるのか、誰なのか、本当に予想できないのだ。
 突然牙を向かれ、次の瞬間には飲み込まれている。

「……ってことだから、小春ちゃん。ちょっとだけ協力してね」

 瑠奈がステッキを振ると、小春の両足が膝まで石化され、身動きが取れなくなった。

「……っ」

 奇妙な感覚だった。
 動かさずとも足が異様に重く冷えているのが分かる。
 全身を石化された和泉は、いったいどれほど苦しんだだろう。

「大丈夫! 小春ちゃんのことは殺さないよ。だって、魔術師じゃないから。殺したらあたしが損するもん」

 友だちだったはずの瑠奈でさえ、敵として目の前にいた。
 誰ひとり信用できないのだ。

 小春の目に涙が滲んだ。
 恐怖よりも強い悲しみと怒りを覚える。

 こんな残酷で勝手なゲーム、まともにやるべきじゃない。
 そう思うけれど、生死を握られている以上、なおざりにできないというのも事実だった。
 少なくとも瑠奈は本気だ。

「わたしを、どうするつもり……?」

「小春ちゃんはただの餌だよ。蓮くんをおびき寄せるためのね」

 そう言うとスマホを取り出し、小春を写真に収めた。

【大事な小春ちゃんを助けたかったら、ひとりで河川敷に来ること!
武器は禁止!
リミットは日が落ちるまで。待ってるからね】
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