ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜

第21話 11月27日[後編]

     ◇



「……マジか」

 メッセージを受け取ったアリスは呟いた。

 紅を見つけ出すために別行動していたのに、まさか冬真が先に見つけてしまうなんて。

「やばいかもな、あたしも」

 彼に“使えない”と判断されれば、容赦なく殺されるだろう。
 特にアリスのような人間は。

 思わず身構えてしまいながらも、言われた通りに河川敷へ向かった。

「え……?」

 ────高架下に下りたとき、目に飛び込んできた光景に困惑してしまう。

 冬真が小春たちと一緒にいるのだ。

 傀儡や絶対服従で従わせている様子も、小春たちが彼を人質に取っているような様子もない。

「どういうことや? 何でそいつらとおんの?」

 冬真の性分(しょうぶん)は知っている。彼が小春たちに味方するわけがない。
 逆もまた(しか)りだ。

「冬真くん、アリスちゃんを拘束して」

「!?」

 小春の言葉に応じた彼がてのひらを構え、アリスに向かって蔦を伸ばした。

 つい呆然としてしまうと、しゅるりと巻きついて捕縛(ほばく)されてしまう。

(わけが分からん……。ほんまに、何が起こってんねん)

 混乱しながらも、ぐんっと自身の身体を大きくすると、蔦が裂けてちぎれた。
 はらはらとその場に散る。

「ね、ねぇ。このふたり会わせてよかったのかな……」

 はたと思い至った瑠奈は不安そうに小声で呟く。

 アリスが余計なことを口走ったら、冬真の記憶が戻ってしまう可能性がある。

「いまさらどうしようもねぇよ……」

 油断なく彼らに目をやりながら、蓮も声を抑えて返した。

「なあ、何があったん? 桐生や佐久間は? その地面の血は……?」

「……?」

 ふと冬真の動きが止まる。
 そんなこと、どうして自分に聞くのだろう。

「おい、聞く耳を持つな! もっかい拘束しろ」

 慌てる蓮に促され、冬真は再びてのひらを向ける。

 しなった蔦が伸びて迫るのを見定めたアリスは、今度はぽんっと身体を縮めてすばしっこく避けた。

「無駄無駄! どうせ無理やろうから教えたるわ、あたしの異能のルール」

 余裕を取り戻したようにせせら笑う。

「巨大化も矮小化(わいしょうか)も、所有権があたしにあるものはあたしとサイズが連動する。たとえば服とか靴とかがそう」

 それ以外は本来のサイズのままということになる。
 つまり────。

「あたしを拘束して、なおかつ抜け出すのを防ぎたかったら、あたしの持ち物を使わなあかんってわけや」

「どうするの……」

 紗夜が誰にともなく尋ねるも、それぞれが困苦(こんく)を滲ませた。

 見たところ、当然ながらアリスは拘束に使えそうなものなんて持っていない。

「そんなことより、あんたどういうつもりや?」

 人の変わったような冬真を見やったとき、ふと地面に残る血溜まりが目につく。

 はたと唐突にひらめいた。

(まさか、佐久間……?)

 冬真は記憶を操作されている、そう考えれば、この不自然な現状にも合点がいく。

 大雅と律のふたりと相対した冬真は、試合に勝って勝負に負けたわけだ。
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