ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜

「……なあ」

 遠慮がちに蓮が口を開く。

「一緒に寝てもいいか?」

「えっ!?」

 思わぬ言葉に戸惑った。
 それまで蔓延(はびこ)っていた不安感が、ぱちん、としゃぼん玉のように弾ける。

「い、一緒に……?」

 ふいに頬が熱を帯びた。
 瑠奈のせいで変に意識してしまう。

「ひとりじゃ眠れねぇんだろ、余計なこと考えちまうから。俺もそう。だから……」

 とはいえ、一緒に寝るなんてなおさら眠れなくなるのではないだろうか。
 けれど、どのみち蓮の言う通りだった。

「わ、分かった」

 そう答えると、蓮は小さく微笑んだ。
 それから、はっと慌てて両手を上げた。

「大丈夫、指一本触れねぇから!」

「それは心配してないよ」

 小春が笑うと、なぜか彼はむっとする。

 それに気づいてか否か、今日のことに思いを()せた小春はぽつりと呟いた。

「……海、綺麗だったな」

「また行こうぜ、今度は夏に」

「うん、行きたい。瑠奈や奏汰くんも一緒に……次は紗夜ちゃんたちも誘って。それから────」

 明日のその先、そして、12月4日の先の話をした。

 静寂の間で思いついたことを口にするだけの、取り留めのない会話。
 けれど、ささやかな声には希望が滲んでいた。

 ────23時56分。

 だんだん沈黙の幅が広くなっていき、うつらうつらとしていた小春はいつの間にか眠りに落ちていた。

 そっとその頭を撫でた蓮は、音を立てないようソファーから下りて正面に屈んだ。

「……小春。俺さ、中学の頃におまえと初めて会って、腐れ縁でずっと一緒にいたけど……本当はそれだけじゃなくて。俺がそうしたくておまえのそばにいたんだ」

 一度、深く息を吸う。

「いつからかはわかんねぇけど……。俺、小春のことが好きなんだよ」

 眠っている彼女からは、当然何の反応もない。

 それでよかった。
 そうでなければ、まだ言えない。

「……こんなことになるなら、もっと早く言えばよかったな」

 ぎゅう、と拳を握り締めた。
 つい感傷的になって、はたと我に返る。

「くそ、フライングした。なにビビってんだ、俺」

 想いを伝えるのは、すべてが終わってからのつもりだった。

 これからしようとしていることに、その結果に、少し怯えてしまっていた。
 つい弱気になっていたようだ。

 立ち上がった蓮は、小春から離れてスマホを手に窓際へ向かう。

 23時58分から59分になった瞬間だった。
 ウィザードゲームのアプリを開いて「④」を選ぶ。

 ぎゅっと祈るように目を閉じる。

「…………」

 そのまましばらく待った。たぶん、1分近くそうしていた。

 いまのところ身体に異常はない。
 心臓も動いているし、記憶も失っていない。

 そっと目を開け、画面を見やる。

【オメデトウ!
キミには“風魔法”を授けるよ〜】

 慎重に文字を目で追った。

【あなたの“寿命(80年分)”を消費しました。
魔法ガチャは23時59分に再度回せるようになります】

 無意識に止めていた呼吸を再開する。

 つ、と垂れてきた鼻血を人差し指で拭い、蓮は微かに笑う。

「……俺って長生きだったんだな」

 正直なところ、その数字は衝撃的だったものの、すぐに支障があるようなものではなくてよかった。

 小さな賭けに勝ったと言える。

 スマホをしまうと、小春を横抱きにして布団に運んでいった。

 ────この温もりを、失いたくない。
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