ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜

 彼は何者で、あの発言の意図は何なのだろう?
 動揺を隠せない小春が呟くと、琴音はふたりに向き直る。

「少しだけ待って。瑠奈がいなくなったらわたしたちも移動する」

「説明になってねぇって。あいつ、何なんだよ? 瞬間移動させろなんて意味分かんねぇこと────」

「それはあとよ。いいから、普通にして」

 琴音は物陰から出ると、周囲を見回した。

 慌てて追ってきたのだろう蒼白(そうはく)の瑠奈が、目を見張りながらこちらを見つめていた。

「そんな……」

 返り討ちに遭ってしまったのだろうか。
 大雅の姿が消えたことに気づき、絶望的な気持ちになった。

「彼、あなたのお仲間?」

 琴音は腕を組み、高圧的に瑠奈を見据えた。

「残念だったわね。何をしようとわたしには敵わないわよ」

「……っ」

 あれほどに強い異能を持つ彼でさえ、こうもあっけなく一瞬でやられてしまうなんて────。

 あとずさった瑠奈は、きびすを返すと一気に駆け出した。



 逃げるように走り続け、追ってきていないことを確かめると足を止める。
 スマホを取り出し、慌てて冬真と通話を繋いだ。

「もしもし! 大雅くんがどこかに飛ばされちゃった……! どうしよう、もしかしたらもう……」

 うまく息を吸えず、声が震えた。

 琴音を倒せるかもしれない、なんて浅はかな希望は無惨にも打ち砕かれた。



     ◇



 突然、目の前の景色が変わったことに、はっとしながら小春は周囲を見回した。

 吹きなびく草と流れる川が目に飛び込んでくる。
 河川敷に移動したようだ。

「……来たか」

 声のした方を見ると、橋の下に先ほどの男子が(たたず)んでいた。
 気だるげに壁から身を起こし、小春たちの方へ歩み寄ってくる。

「どうだ、撒いたか?」

「……ええ、とりあえずは心配ないわ」

 琴音は頭痛をこらえながら答えた。
 間を置くことなく瞬間移動を繰り返したことで、反動が出たようだ。

 どちらかと言えば逃げたのは瑠奈の方だったけれど、少なくとも琴音たちがいま大雅と接触しているなんて夢にも思わないだろう。

「悪ぃな、合わせてもらって。助かった」

「どういうことなの? あなたはいったい……?」

 小春が戸惑いをあらわにすると、大雅は両手をポケットに突っ込んだままぶっきらぼうに答える。

「俺は桐生大雅。テレパシー魔法の魔術師だ」
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