実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

 悪役令嬢としての運命は、記憶を思い出した直後に終わったと思っていた。
 今の私は、もう令嬢ではないから……。それでも、もし悪役令嬢の物語に続きがあるのだとしたら……。

 レザール様のお母様は、レザール様を生んだときに亡くなったという。
 そのあと、どんな思いをしながらレザール様が、王宮という華やかだけれど、生き延びるのは容易ではない場所で暮らしてきたかはわからない。

 三日後、私は何重にも重ねられた薄いフリルで、いつもよりも華やかなドレスに身を包んで屋敷の外に出る。

 なぜか、とてもお忙しくなってしまったレザール様には、あれからお会いできていない。
 けれど、王宮にたどり着いて、差し伸べられた手を取り馬車から降りた私は目を見開く。

「れ、レザール様?」

 御者をしてくれていた騎士だと思ったエスコートの手は、レザール様のものだった。
 完璧な正装とよそ向きの笑顔。
 それでも、明らかに怒りを交えて微笑んでいることが、私には分かってしまった。
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