春の花咲く月夜には
意を決し、返信するための文章を慎重に考えていく。


『昔のことは、もう気にしていないので大丈夫です。

ですが、私なりに色々考えて、会わないことに決めました。

本当に、申し訳ありません。』


最小限の、冷たいとも感じるであろう短い文章。

誤解を解きたい、話したいと言っている先生に、寄り添おうとはしないのだから。

それはやっぱり怖くって、勇気が必要なことだけど。

見直して、何度も何度も書き直し、もう、この文章にしようと決めてメールを送った。

「・・・・・・」


(・・・送ってしまった・・・)


ふうっと、肩の力が抜けていくような感覚がした。

けれど同時に、これまでの思い出が全て壊れていくような、怖さと切なさに襲われて、苦しさでぎゅっと胸が痛んだ。


(これで、きっともうメールは来ないよね・・・。先生は、私を冷たい、ひどいと思うかな・・・)


考えると、それはやっぱりとても切ないことだった。

長い間、ずっと私の胸を占めていて、たくさんの思い出とともにあった人だから。

だけどもう、これでいいんだ。

これでいいーーーーー・・・。

私は、何度も自分に言い聞かせ、苦しさや切なさや、怖い気持ちも飲み込んで、心の奥に閉じ込めた。









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