春の花咲く月夜には
ーーー会わないようにと願っていると、なぜか今までよりも遭遇率が高くなる。


次の日も、その次の日も、会社内で賀上くんと顔を合わせることがよくあった。

姿を見たい、という思いはどうしても持ってしまうけど、できれば顔を合わさずに、チラッと見かけるだけがいい。


(・・・だって、そうじゃないと、緊張するし、へんな態度をとっちゃうし・・・)


以前の反省を生かさなくては・・・と、一応は、会うたび普通を装って、「おはよう」だとか「おつかれさま」とか、最低限の挨拶だけはするように心掛けてはいるけれど。

目を合わせることはできないし、どこか避けるような態度になってしまって、やっぱり、今まで通りに話すというのは難しかった。


(こんな態度・・・、賀上くん、きっといやな思いをしてるよね・・・)


自分でも、どうにかしなきゃと思うけど。

意識すればするほどに、どうにもできないものだった。





金曜の午後。

ふっと時計を見ると3時を少し回ったところ。

午前中からの疲れが溜まり、私はうーんと伸びをして、首と肩をぐるりと回した。


(・・・疲れた・・・。一回休憩しよう。コーヒー買ってこようかな)


ふう、と一度息を吐き、お財布を持って席を立つ。

事務課のフロアの外へと出ると、賀上くんに会いませんように・・・と、願いながら廊下を進んだ。

どこかへ移動する際は、彼にばったり遭遇するんじゃないかと毎回ドキドキしてしまう。

とりあえず、今日は願いが効いたのか、彼には会わず、自販機の前まで無事にたどり着くことができた。


(よかった・・・。でも、毎回こんな感じだと、コーヒーを買いに行くだけでも疲れちゃうよね・・・)


早く告白の返事を決めて、彼に伝えた方がいいかもしれない。

いつまでも賀上くんを待たせるわけにはいかないし、イエスにしてもノーにしても、どちらか答えを出して伝えたら、意外と心がスッキリし、普通の態度ができるかも。
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