春の花咲く月夜には
見てて歯がゆく思うのは、私だけのことじゃなく、賀上くんも同じのようだった。

仕事上、今の紗也華は賀上くんとコンビのようなものだから、余計に気になるのかもしれない。

「で?どーなの?ほんとのとこ」

「・・・・・・」

ここまで気づいている紗也華のことだ。

今更、ごまかしや嘘が通じるとは思えなかった。

それに、なんだかんだ言いながら、真面目に心配してくれているのもわかるので、恥ずかしいなと思いつつ、正直に話すことにした。

「・・・その・・・、付き合ってはいないんだけど・・・、告白されて」

伝えると、紗也華は「おお~っ!?」と言って、楽しそうな顔をした。

自分の恋愛について話すのは、恥ずかしくって、やっぱり私は少し苦手だ。

「いつの間にっ。まあ、ちょっと怪しいなとは思ってたんだけど・・・。うん、で、心春は返事を悩んでるんだ?」

「・・・うん」

「そっか。でもなんで?心春も賀上くんのこと好きそうなのに」

心底不思議、といった表情で紗也華が私のことを見つめる。

ばれている・・・と、私はドキッとなったけど、ここまできたら、今の気持ちを素直に話すことにする。

「・・・賀上くん、かっこいいし優しいし・・・、会社でも結構モテるでしょう?なのに、私でいいのかなとか・・・、考えると、一緒にいる自信がなくて」

言葉にすると短いけれど、ずっと悩んでいる気持ち。

勇気を出して伝えると、紗也華は何度か目をぱちくりとして、宙に向かって「おーい!」と叫ぶ。

「なんだその理由。早速ノロケてきましたな」

「え・・・!?ど、どこが!?」

「だって、心春が『付き合う』って言ったらその時点で賀上くんもう彼氏でしょ?彼氏がかっこよくて優しいなんて、もう、完全にノロケじゃん」

「い、いやそれは・・・」

「違うと思う」と私は意見をしたけれど、「ノロケにしか聞こえませんな」と、紗也華も一歩も譲らない。

なんとなく、紗也華の言いたいこともわかるけど、今の自分がノロケていい立場じゃないってこともわかってる。
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