春の花咲く月夜には
「ふーん・・・、でも、それが悩んでる理由なの?賀上くんは確かにかなりのイケメンだけど・・・、心春だってかわいいし、引け目を感じる必要なんてなんにもないと思うけど」

「・・・・・・、ありがとう。そう言ってくれるのは、嬉しいけど・・・」

今の私は、本当に、自信がなかった。

紗也華の言葉は素直に嬉しく思うけど、想像上の葉月さんや、見知らぬ誰かとどうしても自分を比べてしまう。

気持ちが沈んだままの私に、紗也華は「うーん」とうなって首を傾げた。

「・・・なんだろなあ・・・、心春がそんなに自信がない理由。私がもしも心春なら、人生もっと調子に乗っちゃうとこだけど・・・。んー・・・、なんか、恋愛にトラウマでもあるの?」

「えっ」

紗也華の問いに、私は心臓がドキリとなった。

先生のことを「トラウマ」という言葉で考えたことはなかったけれど、長く引きずっていたことは、確かな事実だったから。

「・・・や~、実は前からちょっと気にはなってたんだよねえ。心春、大学の時に付き合ってた人と別れてから、ずっと彼氏いないでしょう?けど、心春の場合、できないっていうよりも、つくらないようにしてるというか・・・、避けてる感じに見えるから。もしかしたら、なにかトラウマ的なことでもあるのかなあって」

「・・・・・・」

入社以来、紗也華とは約6年にもなる付き合いだ。

私はあまり自分の恋愛について話したことはなかったけれど、紗也華には、色々と気づかれているのかもしれない。

「賀上くんのことも、イケメンで気が引けるっていうのは確かにちょっとわかるけど・・・。心春の場合、そこだけじゃない気もするんだよなあ・・・。その・・・大学時代の元カレに、なんかひどいことでも言われた?」

心配そうに問いかけられて、私は即座に首を振る。

先生に、ひどいことを言われた記憶は一度もないから。

「ううんっ、それはない」

「ほんと?」

「・・・うん。確かに私はフラれた側だし、つい最近まで引きずってる感じはあったけど・・・」
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