春の花咲く月夜には
私の言葉に、紗也華は「んんー?」と言って、訝しそうな顔をする。

「つい最近までって結構長いね。・・・ふーん・・・、でも、そんなに引きずっちゃう彼氏だったのか。すごい年上だったってことだけは聞いてたけど・・・、実際、どんな人だったの?」

紗也華の問いに、私は言葉をつまらせた。

賀上くんの時は、先生とばったり会って自然と話してしまったけれど、こうして改めて聞かれると、あまり話したくないような・・・話しにくい気持ちがあった。

軽々と口にしてはいけないような、そんな想いも未だにあるのかもしれない。

悩んだままでいる私をじっと眺めると、紗也華は「はっ!」と何かを思い立つ。

「もしかして・・・不倫だったとか!?」

「そ、それは違うっ」

「うーん、じゃあ、どんな相手だったのさ。ここまで心春に気持ちを引きずらせてきた元カレシって。その人との間に絶対なんかあると思うんだけど・・・。いいからちょっと話してみい。ここはもう、賀上くんのためだと思って」

うんうん、と、説得するように頷いて、紗也華は私を促した。

どうしよう・・・と私は少し悩んだけれど、紗也華のことは信頼しているし、ここはもう、話してみようと決意した。


(・・・確かに、話すことでいろんな気持ちが変わってくるかもしれないもんね・・・)


賀上くんとの関係を、進める勇気が出るかもしれない。

それに、先生とはこの前のメールで全て終わったのだという思いが強いこともある。

全て終わったことだから、もう、話してもきっと大丈夫。



ーーーそれから。

先生と初めて出会った時のこと、中高時代ずっと片思いをしてたこと、卒業後・・・20歳の時に再会し、付き合うようになったこと、別れた理由やその後耳にした噂も全て話した。

最近偶然再会し、「あの時の誤解を解きたい」「会って話したい」と言われたけれど拒否したことも。

途中、当時を思い出し、何度か泣きそうな気持ちになった。

もう、全てが終わったし、気持ちの整理もできたつもりでいたけれど、心のどこかで、まだ、なにかが引っかかっているのかもしれない。
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