春の花咲く月夜には
ぐっ、と、胸の奥に何かが(つか)える感覚がした。

私は、確認するようにポツリと呟く。

「・・・彼女、は、やっぱりいたのかな・・・」

10年ぐらい、一度も別れたことがなく、ずっと付き合っていたという当時の彼女。

今は先生の奥さんだけど・・・、私と付き合っていた時も、やっぱり、ずっと続いていたのだろうか。

私の小さな呟きに、紗也華は「そうだね」と淡々とした様子で頷いた。

「状況的に考えて、ほぼ100%、二股かけてたと思う。心春が認めたくないのもずっと好きだった人を信じたい気持ちもわかるけど・・・、まあ、確実にクロだと思うよ」

「・・・」

心が沈む。

あくまでも紗也華の見解だけど、どこかで私も、そうだろうって思っているのかもしれない。

「今回再会した時に、『誤解を解きたい』って言ってきたのも私的には怪しいな。何年間も、ずっとなにも言わずにいたのにさ。偶然再会して・・・っていうのはきっかけとしてあるかもだけど、メールで説明するんじゃなくて、わざわざ『会って話したい』って条件つけてくるのがなんか怪しい。多分だけど・・・、大人になった今の心春を見て心が動いて、また付き合いたいとか思ったんじゃないのかなー」

「え・・・!?」

「まあ、あくまでも私の想像だけど・・・。心春なら、面と向かって必死に謝るっていうか言い訳すれば、全部許してくれるとか思っちゃってる気がするけどね。それでまた、あわよくば付き合いたい的な」

そう言うと、紗也華はビールをゴクリと飲んだ。

私は驚き、「でも」と言って言葉を続ける。

「先生は、今はもう結婚してるから・・・、それはさすがに」

「んー・・・、まあ、普通の人なら踏み留まると思うけど。先生、確実に前科があるしなあ・・・。それに、結婚して、5、6年でしょ?その先生なら、そろそろ浮気したいと思う頃かも」


(ま、まさか・・・)


胸がとてもざわざわしていた。

そういうふうに考えたことはなかったし、先生がそんな人だとは、考えたくないことだった。

落ち着かない私を見ると、紗也華は大きく息を吐く。
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