春の花咲く月夜には
「・・・心春さあ、その先生のこと、ずるくてダメな男って、もういい加減、ちゃんと認めた方がいいと思うよ。多分だけど・・・、その先生のことを、どこかでまだ『すごい人』とか『素敵な人』って思ってるから、その人に裏切られた自分とか、選ばれなかった自分をどこかで責めてるっていうか・・・、ダメみたいに思ってるんじゃないのかなあ」

「・・・・・・」

そうなのだろうか。

自分のことがわからずに、頭の理解が、ついていかない。

「とりあえず、心春にダメなところはないよ。その先生がずるくてダメ男だっただけ。あ、けど、しいて言うなら・・・、そうだね、男の趣味がとんでもないほど悪かった」

そう言うと、紗也華がニヤッと笑顔になった。

私はなぜか、目から涙がポロポロと零れて落ちていく。

「・・・うん。いいじゃん賀上くん。心春の言う通りイケメンだし優しいし・・・、仕事もできるヤツだしね。・・・って、なんか、言っててムカついてきたな」

「あいつは完璧ヒーローか!」と言って、紗也華は眉間にシワを寄せ、こぶしを空に向かって突き上げた。

その様子がなんだかとてもおかしくて、私は思わず笑ってしまった。

すると紗也華は「お」と言って、嬉しそうに優しく笑う。

「・・・うん。心春は、笑ってるのが一番いーよ」

ドキリとした。

本当に、紗也華が心からそう言ってくれているのがわかるから。

「賀上くんにも言われない?」

「う、うん・・・、そうだね。そういうのは」

「・・・そっか。けど、きっと思ってる。大丈夫、心春はかわいいし優しいし真面目だし・・・、って、あれ。待てよ。賀上くんにはもったいない気がしてきたな」

紗也華は今度は真面目な顔になって言う。

「それはないっ」と私は慌ててツッコんだけど、紗也華は「いやいや~」と言って首を振る。

「・・・まあ、心春なりに色々気になるのかもしれないけどさ、賀上くんは心春が好きなんだから。すでに両想いだし、なんにも気にすることないと思うよ。それでもまあ、周りの評価みたいなのが気になるって言うんなら、わざわざ付き合ってるって言う必要もないと思うし」
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