春の花咲く月夜には
「もう、メールじゃ(らち)が明かないと思ってな・・・。心春、俺が結婚してたの知ってるだろ?それできっと遠慮して・・・、奥さんに悪いからってあんなメールを送ってきたと思うんだけど・・・、とりあえず、その心配はいらないってことを伝えにきたんだ。実は、もう離婚してて・・・、俺は今、独身だから」

「!」

私はとても驚いた。

先生が離婚してたということも、そしてそれを、わざわざ伝えにきたことも。

「心春もきっと、色々話を聞きたいだろ。俺も色々話したい。本当は・・・、結婚した時からずっと後悔してたんだ。ずっと・・・心春のことを考えていた。やっぱり俺は、心春じゃないとダメだったって・・・」


(え・・・?)


な、に・・・・・・、そ、れ・・・。

結婚を・・・、ずっと後悔してた?

ずっと・・・、私のことを考えていた?

だったらどうしてーーーーー・・・。

今までの悲しかったこと、ずっと我慢してたことーーーーー、様々なことが、走馬灯のように蘇る。

そして今日、またひとつ悲しくなった。

こんなこと聞きたくなかったし、今の私は、もう、昔のように先生に夢を見ていない。

「・・・い、今更ですっ。すみませんが、手・・・、は、離してくださいっ」

「いや・・・、話だけでも聞いてほしいんだ。心春はきっと誤解してる。とりあえず、10分だけでいいから」

「っ、む、無理です!急いでいるし、ほんとに、離してくださ・・・っ」

ぐっ、と、手を振り解こうとした際に、私はバランスを崩してよろけてしまった。

と、すぐ横を歩いていた男性に、ドンッ!と身体が当たってしまう。

「すみません!」と謝って、男性の顔を見上げると、見知った顔で驚いた。

ぶつかった男性は、以前、賀上くんが連れて行ってくれた・・・「rabbit」の店主のマサさんだ。

マサさんも、「あら」と言って、とても驚いた顔をする。

「心春ちゃん・・・、だったわよね。どうしたの?そんな顔し・・・て・・・」
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