春の花咲く月夜には
「・・・今、起きたとこですか?」

「っ、うん」

「・・・そっか。すいません。心春さん、全然状況がわからないと思うんですけど・・・」

「あ、あの・・・」

「・・・、えっと・・・・・・、あっ!水でも飲みますか?」

「っ、はい!お、お願いします」

2人でなんだか落ち着かなくて、お互いに、ぎこちないやりとりをする。

賀上くんはキッチンに行って水の入ったコップを手にして戻ってくると、私に「どうぞ」と渡してくれた。

「ありがとう・・・」

私は早速ゴクリと飲んだ。

ちょうど喉が渇いていたし、「おいしい」と感じる水だった。

ペットボトルのお水かな。

コロンとした、かわいらしいフォルムのグラスにもちょっと癒されて、私は、気持ちが少し落ち着いた。

「・・・あの、ここ・・・、賀上くんの家だよね?ごめんなさい、私、いつの間に・・・」

まだまだ訳がわかっていないけど、私はほんの少しだけ、この状況を理解した。

ここは賀上くんの家。

そして私が今座っている・・・、今の今まで寝ていたベッドは、明らかに賀上くんのもので、それを完全に一人で占領していた。

「あ・・・、いや・・・・・・、覚えてない、ですよね」

「・・・・・・、うん・・・」

寝起きの頭でうまく思考が回らないまま、私は昨日の記憶を辿る。

ーーー残業帰り、駅の近くで先生に会い、悲しくて困っていたところをマサさんに会って助けてもらった。

それから、マサさんのお店に連れて行ってもらって・・・・・・、「ANTENNA」のみんなと出会って一緒に飲んだんだ。

色々話して楽しくて、私はーーーーーー・・・、確かライブに行くって話してそれから・・・・・・、ダメだ・・・、そこらへんから思い出せない・・・。

私がうーんと悩んでいると、賀上くんは入り口近くに腰を下ろした。

そして、「なにから話せばいいかな・・・」と、慎重な様子で話し出す。

「昨日の夜・・・、マサさんから、『心春さんが店で寝ちゃったから迎えに来てほしい』っていう連絡がきて」

「・・・え!?」
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