春の花咲く月夜には
そこで私はハッとして、ブラウスのボタンに手を当てた。

首元まであるブラウスの、第一、第二ボタンが外されている。

また、左手で腰の辺りを触ってみると、タイトスカートのホックが外れ、ファスナーが途中まで下がっている状態だった。

私は、顔がかぁっと熱くなる。

「あっ、あの、けど、それ以上は、ほんとになにもしてなくて・・・」

「う、うん!」

もちろん、彼を疑うなんてことはない。

もともと信頼しているし、今、顔を真っ赤にし、必死な様子の賀上くんが嘘をついているとは思えなかった。

ただ、ひたすら私が恥ずかしい。

本当に、それだけだった。

「・・・え、えっと・・・、それで・・・、賀上くんは、どこで寝たの・・・?」

私はボタンを留めながら、少しだけ話題を変えた。

恥ずかしすぎて、服以外のことに意識を持っていきたかったし、気になっていたことだから。

「出掛けてたみたいだし・・・、ネットカフェとかに泊まってた・・・?」

「あ、いえ。さっきはちょっと買い物に出てて・・・。夜は違う部屋で寝てました。同じ家にいない方がいいかなとも思ったんですけど・・・、心春さんを一人にするのも心配だったから」

「・・・・・・」

今、ベッドから見える範囲の判断だけど、賀上くんの家の間取りは、多分1DKだ。

しかも、D・・・ダイニングは、1畳か2畳くらいの広さだと思う。

この部屋以外で寝たということは・・・、ここからチラッと見える、あの場所で寝たんだと思う。


(・・・ああ、もう・・・。絶対寝にくかったよね・・・)


「・・・ごめんね、本当に・・・。そうだ、今日、約束だってしてたのに・・・」

「ああ・・・、いえ。それよりオレは・・・・・・」

そこまで言って、賀上くんが口を閉ざした。

何かを迷っているように。

そこから先の、言葉を吟味するように。

ーーーお互いが、お互いを意識するような長い沈黙。

どうしよう・・・と思っていると、賀上くんが迷いながらも口を開いた。

「・・・、心春さん、昨日、元カレの先生と揉めてたような話を聞いたんですけど・・・。大丈夫でしたか」

「!」
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