春の花咲く月夜には
少しそっとしておこう、という、店長なりの配慮のようだ。

「・・・・・・」


(・・・なんか、大変なことになってしまった・・・)


右隣の男性と、2人でしゃがみ込んだまま、私は再び、呆然となりつつ考える。

今日は、自ら進んで・・・というわけではなかったけれど、婚活アプリの男性に、勇気を出して会いに来た。

・・・ただ、それだけだったのに。

それだけのことだったのにーーー、まさか、こんなことになろうとは・・・。

「・・・あの、すみませんでした・・・。こんなことに巻き込んでしまって」

経緯はどうあれ、知らない人まで巻き込んで、こんな騒動になってしまった。

右隣の男性に頭を下げると、彼は「え」と小さく口を開いた。

「や、こっちこそ。オレがふっかけなければ、あのオッサンもあんな逆上しなかったかもしれないし。気い短すぎんなって反省してたとこなんで」

「こっちこそすいません」と、男性は小さな声で呟いた。

私は、ぶるぶると首を横に振る。

「いえ、本当に・・・、どうしたらいいのかわからない状況だったので。声をかけてくれてありがたかったです」

「・・・別に・・・・・・、オレはただ、ああいう・・・人の弱いとこ利用するみたいなヤツが心底嫌いなだけだけど・・・。まあ、おねーさんも、ああいうヤツへの対処法は考えといた方がいいんじゃないですか。アプリで会ったんですよね?これからもいると思いますよ、ああいうの」

「は、はい・・・」

思わず素直に頷いた。

今後は奈緒に何を言われてもアプリはしないと思うけど、平沢さんに、もっと強い態度を示すべきだったと思うので、そこは確かに反省点ではあったから。
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