春の花咲く月夜には
そういえば、昨日の夜はいつもより早く「おやすみ」ってメッセージが私に届いた。

あの後すぐに寝たのなら、寝不足は解消されているかもしれない。

「ま、とにかくさ。私たちはただ楽しみにライブに行けばいいんだよ。いや~、会社の後輩男子のバンドとか、楽しみすぎて仕方ないっ」

うずうずと、紗也華が震えた。

賀上くんのステージを、本当に楽しみにしているようだった。

「人気あるんでしょ?賀上くん」

「うん・・・。この前行った時には、『サクヤー!』って黄色い声が飛んでたよ」

「マジで!えー、私も『サクヤ~!!』って叫んじゃおうかなあ。賀上くん、気づいたらどんな顔するだろー」

ふっふっふっ、と嬉しそうな企み顔をする紗也華。

いろいろな意味で、紗也華は本当に楽しんでいる。

「ど、どうかな・・・。賀上くん、普段は前髪全部下ろして顔見えないようにしてるから。見られるのとか騒がれるのとか、基本的には恥ずかしいんだと思う」

「へえー・・・、そうなんだ。ん-・・・、なるほど。よし!過去イチ大きな声で叫んじゃお」

「ええっ!?」

逆に!?と思ったけれど、それは紗也華にとっては彼へのエールに違いなく。

もしかしたら、彼もなにか応えてくれるかもしれない。

「心春も一緒に『サクヤー!!』って叫ぼーよ」

「っ!?・・・そ、それは・・・、ちょっと無理かも」

「無理じゃないっ、だいじょーぶ!賀上くん絶対喜ぶからっ」

「一緒に叫ぼー!!」と、やけに気合いの入った紗也華に私は苦笑する。

こんなやりとりができるのも、賀上くんが紗也華を誘ってくれたおかげだな。

楽しみで、ドキドキとする感情が、どんどん胸に近づいてくる。

ライブまで、あと1時間。






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