春の花咲く月夜には
「うーん・・・、どうかな。いい人だって思ったし、ライブはだんだん楽しみになってきたんだけど・・・、奈緒が期待するような、いい出会いではないと思うよ」

「そんなのまだわからないって!なんかドラマみたいな流れだし。これからなんかあるかもよ?で、その人、かっこよかった?」

「・・・んー・・・そうだなあ・・・」

右隣にいた男性の、姿かたちを思い出す。

長い前髪で、顔はよくわからなかったけれど・・・。

「綺麗な感じの男の人ではあった気がする。あんまり顔は見えなくて」

「ふんふん」

「全体的には、ちょっと気怠げな印象だったかな。背が高くて、なんというか、こう・・・ぱっと見線が細い感じで。弱弱しくはないんだけれど」

「・・・んー・・・、うんうん」

「それに・・・、多分というか絶対年下。『おねーさん』って呼ばれたし・・・。恋愛に発展する感じじゃないと思うよ」

「・・・・・・、確かに。そうね・・・、うん、それは、恋愛に発展したらいけない気がしてきた・・・!」

突然奈緒の意見が変わり、私は「へ?」と声を出す。

ついさっきまで、恋愛に発展することを期待していた感じだけれど・・・。

「気怠げで綺麗で線が細いバンドマンって・・・、しかも年下っ。それ、なんか絶対やばい気がする!おねーちゃん、その人にカモにされるんじゃ・・・!」

「え、ええ!?」


(また、今度は極端な・・・)


「大丈夫だよ。私の説明で上手く伝わらなかったかもだけど・・・、いい人なのは間違いなくて」

「いやいや・・・、最初は優しく心をつかんで・・・、その後で、おねーちゃんのヒモになろうって魂胆なのかも!」

「な、ないない!!私、そんなことできるほどお金持ちには見えないだろうし、本当に・・・・・・、いい人なのは間違いないよ」

彼はあの状況を、「自分のせい」だと言っていた。

あの時の、彼の言葉はただのポーズなんかじゃなかったし、嘘だったなんて思えない。

「・・・ん~~~!!でも心配っ!!!おねーちゃん、変なのにひっかかりそうなんだもん!」

「ちょ、平沢さんを推してきた奈緒に言われたくないんだけどっ!」
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