春の花咲く月夜には
「そ、それはそれ!これはこれ!平沢さんのことは悪かったって思ってるけど・・・、だからこそまた心配よ!ライブ、行かない方がいいんじゃないの?」

子どもの頃は、私が奈緒に対して過保護だったと思うけど、今となっては立場が逆転。

過去の恋愛をずっと引きずったままでいる、私のことを心配してるんだろうけど・・・。

「大丈夫だよ。奈緒が心配してくれているのはわかるけど、あの人は大丈夫だと思う。それに、チケット代はちゃんと払いに行かないと」

「ええー・・・、もー・・・・・・。それだって向こうの作戦なんでしょう?ほんとに律儀なんだから・・・」

電話の向こうで、奈緒が「はあ」と息をはく。

これ以上はもう無理と、私への説得を諦めたようだった。

「・・・じゃあ約束!変な色目とか使ってきたら、すぐに帰ってくるんだよ!」

「うん」

「お金も。不当請求されたらちゃんと断る!」

「うん。・・・もー、大丈夫だよ」

「あとひとつ!これ大事!!」

「・・・なに?」

苦笑しながら私は尋ねる。

本当に、姉妹の立場が逆転してるな・・・。

「ライブハウスでイケメンがいたら声かける!」

「ええ!?」

今度はそっち!?

笑う私に、奈緒は「こら!」と喝を入れた。

「笑い事じゃないの!平沢さんがきっかけで、おねーちゃん、ますます男の人から遠ざかっていきそうなんだもん。その年下バンドマンは不安だし・・・、けど、見に来てるお客さんなら真面目ないい人いるかもしれないし!」


(ど、どうなんだろう・・・?お客さんも、奈緒が心配する感じのバンドマンが多い気がするけれど・・・)


そう思ったものの、堂々巡りになりそうだったし、電話の向こうから琉花の泣き声が聞こえたために、「わかった」とそこで話を終わらせた。

「できたらだけど。じゃあ・・・琉花も泣いてるみたいだし、そろそろ切るね」

「あ、うん、ごめん!じゃ、行った後また報告してね」

「うん、わかった。またね」

電話を切って、苦笑しながら「ふう」と小さく息を吐く。


(早くいい人を見つけて、奈緒を安心させなきゃいけないな)


姉としての使命感。

けれどなにより自分のために、新しい恋を見つけたかった。





< 19 / 227 >

この作品をシェア

pagetop