春の花咲く月夜には
(・・・ん?・・・え、えーっと・・・、待って。これは・・・)


私の頭は、かなり混乱していた。

この、本の「葉月」さんは、賀上くんの元カノである葉月さんに間違いないだろう。

今までは想像でしかなかったけれど、「この人なんだ」と初めて視覚で認識をした。

年下だけど、本当に、大人っぽくてとても綺麗な人だ。

そんな、彼の元カノの美容本を「参考に」と、もらうだなんて、かなり複雑なんだけれども・・・。

とはいえ、今の亜莉沙ちゃんからは悪意も敵意も感じない。

どうやら、本当に純粋な好意で「おすすめの本」として私に渡そうとしてくれているようだった。


(・・・う、うーん・・・、これはかなり複雑だけど・・・、『亜莉沙が葉月を好きなのは崇拝レベル』って、賀上くんも言っていたもんね・・・)


チラリとカナちゃんに目をやると、『気持ちはわかりますが大丈夫です!!どうか受け取ってあげてください・・・!!』と私に懇願するように、うんうん、と必死に頷いている。

やっぱりこれは、亜莉沙ちゃんなりの好意なのだろう。

なかなか難しい感覚だけど・・・、亜莉沙ちゃんは、多分、かなり真面目で真剣だ。

「・・・じゃあ・・・、いただくね。ありがとう」

迷った末に、私は本を受け取った。

すると亜莉沙ちゃんは満足そうに、コクリと深く頷いた。

「心春さんっ」

その時、後ろの方から声がして、振り向くと、賀上くんがこちらに向かって駆け寄ってくる姿が見えた。

亜莉沙ちゃんは、「じゃあまたね」と私に言うと、カナちゃんと、男の子2人を引き連れて去っていく。

「・・・・・・」


(『またね』って、また、話してくれるつもりでいるのかな・・・)


亜莉沙ちゃんの気持ちはわからない。

けれど、今までとは違う大きな一歩で近づくことができた気がする。

そんな、亜莉沙ちゃんたちの後ろ姿を見送っていると、賀上くんが私の隣で立ち止まる。

「亜莉沙、大丈夫でしたか?・・・って、う、うわ・・・っ!!なんで葉月の本なんて持ってるんですか・・・!?」

賀上くんは頬を引きつらせ、ぎょっとしたような顔をした。

確かにこれはびっくりするよね・・・と思いつつ、私は彼に説明をする。

「・・・今、亜莉沙ちゃんが私にくれて・・・」

「えっ!?」
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