春の花咲く月夜には
「・・・・・・ちゃんと、伝わってるよ・・・」

想いが溢れてたまらなくって、私はそう、口にした。

賀上くんの、気持ちはちゃんと伝わっている。

ぎゅっと、胸の奥に響くくらいに。

「・・・賀上くんのそういうところ、私は・・・・・・、すごく好きだよ」

「えっ・・・」

私の言葉に、彼は、とても驚いた顔をした。

私がこんなに好きだって、気づいてないのかもしれない。

気持ちをもっと伝えたくって、私は、積み上げるように言葉を繋ぐ。

「賀上くん、いつも色々なことを考えてくれていて・・・。それで、その時に、一番いいって思うことを、一生懸命してくれて・・・。そういうの、すごいと思うし嬉しいし、私は・・・・・・、すごく好き」

伝えたいって思いをもって言ったけど、素直な気持ちを口にするのは、同時に恥ずかしいことでもあった。

これ以上、言葉にするのはできなくて、だけどもっと気持ちを伝えたいと思って、私は彼に近づくと、そのままそっとキスをした。

ほんの数秒間のキス。

ヒンヤリとした感触に、バニラとチョコの、甘い香り。

私が唇を離してうつむくと、今度は、彼が私を抱き締めた。

耳元で、震えるような吐息が聞こえる。

「・・・そんなこと、言ってもらえるなんて思わなかった」

賀上くんの腕の中。伝わってくる体温と、間近で感じる息遣い。

私の耳に、いつもより、彼の声は甘く響いた。

「オレも・・・、すげぇ好き」

そう言って、彼は私に口づけた。

さっき私がしたキスよりも、ずっと深く・・・、口の中でバニラとチョコが溶け合って、甘さが増していくような。

求めるように、何度もキスを重ね合う。

彼の右手が布を辿って、私の胸に触れていく。

前開きになった黒いワンピース。

そのボタンをひとつずつ、彼は上から順に外してく。

胸元から裾まで並ぶ、ボタンは何個あるだろう。

こういうことを想定せずに、選んで着てきたものだから、申し訳ないような・・・ちょっと、気まずいような気持ちになった。

「あ、あの、ごめんね・・・。ボタン、多くて・・・」

キスの合間に、私は思わず呟いた。

このワンピースは、自分から、脱ぐべき洋服なのかもしれない。

それはそれで、少し勇気がいるのだけれど。
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