春の花咲く月夜には
「・・・いや・・・、心春さん、早くしてほしい?」

「そっ、そうゆうんじゃないけど」

「じゃあ・・・、ゆっくり外していいですか。焦らされるの嫌いじゃないし・・・、すぐに脱がせる服よりオレは好きかな」

「・・・!」

私が頬を火照らすと、彼は笑ってキスをした。

そこからは、さっきまでより丁寧に、賀上くんはボタンをゆっくり外してく。

何もせず、彼にされるがままになっているのは、思いのほかとても恥ずかしく、焦らされているのは多分私なんだと思った。

「・・・できた」

ボタンを全て外されて、ワンピースと・・・、その下に着ていた黒いキャミソールドレスも奪われた。

今はもう、黒いブラジャーとショーツだけの状態だった。

なんとなく、賀上くんは白や淡色系が好きなんじゃないかと思うから、こうなるってわかっていたら、洋服も・・・下着だって変えてきたのに。

「・・・・・・」

賀上くんは、下着姿の私から、迷うように顔を背けた。

頬は、少しだけ赤くなっている。

今の私は・・・、彼の目に、どう映っているだろう。

「・・・なんか、やばいな・・・」

「え?」

「・・・いや・・・」

賀上くんは、私に軽くキスをして、そのまま私を抱き上げた。

そしてゆっくりベッドに下ろし、私の上に跨った。

心臓が、壊れそうなくらいにドキドキしている。

これからはじまることもだけれど、今、賀上くんに、じっと見下ろされているこの状況も、恥ずかしくてたまらなかった。

「・・・か、賀上くん」

「ん・・・?」

「・・・電気、消してほしい・・・」

この状態は耐えられなくて、どうしても、この願いは聞いてほしかった。

けれど彼は「え」と言って、戸惑うような顔をする。

「・・・、綺麗だし・・・、ちゃんと見たいんだけど」

「や、む、無理・・・。お願い・・・」

「・・・・・・」

私をじっと見下ろしたまま、彼はしばらく考え込んだ。

そして、「じゃあ・・・」とゆっくり呟きながら、私に顔を近づけた。

「『咲也』って呼んで、キスしてくれたらいいですよ」

「えっ・・・!?」

私には、まだ、ハードルが高いことだった。

ライブ中、小さく「サクヤ」と言うだけで、いっぱいいっぱいだったのに。

ここで・・・、この状況で、彼の下の名前を呼ぶことは、私には、かなりの勇気が必要だ。
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