春の花咲く月夜には
「心春さんの苦手なこととか・・・、気にすることとかわかってるのに」

もう一度「ごめん」と言って、咲也は、私を強く抱きしめた。

私の胸は、切ないようにぎゅっと痛んで、大丈夫って伝えるように、彼の背中に腕を回した。

「私も・・・、さっき、すぐに返事ができなくて。会社だとまだ構えちゃうし、恥ずかしいとか・・・、どうしても色々考えちゃって」

「・・・うん、心春さんがそうなのわかってる。なのにオレ・・・・・・」

「ほんとごめん」と、咲也は後悔するように呟いた。

私は、何度か首を横に振る。

「でも、そろそろ言っても大丈夫だよ。咲也がそれで安心するなら・・・」

「・・・いや、ごめん、大丈夫。そう言ってくれるだけで嬉しいし・・・、考えてみれば、オレの彼女だってわかったら、心春さんが女の人たちからなんか言われそうな気もするし」

「うん・・・」

と、素直に納得しそうになった時、「ん?」と、私の中でなにかが引っかかる。

もう一度、彼の言葉を吟味して・・・。


(・・・あっ!)


「・・・咲也、会社でもやっぱりモテるんだ・・・」

彼女だってわかったら、女子社員から、私が何か言われるだろうということは。

モテないはずはないって思っていたけれど・・・、やっぱり、と、私の心はざわついた。

「・・・あっ、いや・・・・・・、心春さんが気にするほどでは全然なくて」

「・・・ファンの子にしか、モテないみたいなこと言ってたのに・・・」

「・・・いや・・・、えっと、あの時は」

「・・・・・・」

もしかしたら、私の知らないところで告白とかされているかもしれない。

だからって、浮気をされたわけではないし、私が怒るポイントなんてなにもないかもしれないけれど。


(・・・なんだろう・・・。会社で女の子に言い寄られてる咲也を想像すると、妙に苛立ってしまうというか・・・、心がざわざわするっていうか・・・)


自分の感情をうまく言葉にできなくて、モヤモヤとした気持ちでいると、咲也が突然、嬉しそうにふっと笑った。

「ヤキモチかわいい」

「えっ・・・!?」
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