春の花咲く月夜には
緊張気味に、咲也が深々と頭を下げて、ケーキの箱を手渡した。

ーーー央登さんは、私より3つ年上だ。

「イケメンすぎる!」と咲也に驚いていた奈緒だけど、央登さんも、かっこよくて素敵な人で、初対面の時、私はとても緊張したのを思い出す。

「ああ・・・、ありがとう。咲也くん、そんなにかしこまらなくても大丈夫だよ。ねえ、琉花」

「だっ、だっ」

手をたたき、琉花が笑顔で頷いた。

今日もかわいい・・・と頬を緩ませて、私は、咲也の後ろで琉花に手を振った。

「・・・いや、けど、咲也くん、本当にかっこいいよなあ・・・。背も高いし」

改めて、といった様子で、まじまじと央登さんが咲也を見つめる。

玄関から奈緒がタタッと駆けつけて、「でしょ!?」と央登さんに同意した。

「そうなんだよっ。なんかやけにキラキラしてるし・・・、どうおもてなししたらいいのかっ」

「・・・や、あの、お構いなく・・・」

央登さんと奈緒に褒められて、咲也は落ち着かないようだった。

やっぱり、普段の咲也は褒められたり注目されたりすることが、あまり得意ではないのかもしれない。





しばらくはそんな調子が続いた。

奈緒はあたふたしながらテンション高く、咲也は緊張気味で、落ち着かない様子だったけど。

1時間もみんなで話をしていると、いつの間にか、自然と打ち解け合ってきた。

「・・・へえ~、そっか、じゃあ、バンドって、高校生の頃からのメンバーなんだね」

「はい。気づいたら、結構長い付き合いになってます」

咲也と奈緒は、年齢でいったら今は同い年になるのだけれど、学年でいったら、奈緒がひとつ上になる。

最初はあたふたしていた奈緒だけど、咲也に親しみを感じてきたようで、早くも友達口調で楽しそうに話をしていた。

「・・・そっかあ。仲良さそうだし、楽しそうだしいいよねえ。今はまだ心配だけど・・・、琉花がもうちょっと落ち着いてきたら、私も咲也くんのライブに行ってみたいなあ」

「ああ、ぜひ」

「あ、いいな。俺も行ってみたいかも」

「じゃあ、その日は私が琉花の面倒見てますね」

たわいもない話で盛り上がる。

と、そばで遊んでいた琉花が、「あー」と言って顔を上げ、ハイハイで咲也に近づいた。
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