春の花咲く月夜には
「う、うん、ちょっと戸惑ってるけど・・・、そのうち勘違いって気づくと思うから。というか賀上くん・・・、彼女、いるのかな?」

今になって思い出したけど。

ライブを見に行った日に会った・・・賀上くんを「サクヤ」と呼んでいた、金髪のかわいい女の子。

あの子のことを彼女かもしれないと思っていたけれど、未確認のままだった。

「いえ、いませんけど」

「あっ、そうなんだね。・・・、ええと・・・、ライブの日に会った金髪の・・・最初に出たバンドのボーカルの女の子、すごく親しそうだったから。もしかしたら、彼女かなって思ってて」

「金髪・・・・・・、ああ、亜莉沙か」

賀上くんが苦笑した。

私が首をかしげると、彼は笑って話し出す。

「亜莉沙はまあ、バンド仲間というか・・・、うちのボーカルの妹なんです」

「妹」

「はい。うちのバンド、全員高校の時の同級生で。その頃亜莉沙はまだ小学生だったけど、しょっちゅう練習見に来てて。それこそオレら全員の妹みたいな存在というか」

「・・・そうなんだ・・・」

「はい。超生意気な妹って感じですけどね」

賀上くんが苦笑した。

本当に、恋愛対象として見ておらず、妹のように考えているようだった。


(・・・そっか・・・。でも、アリサちゃんの方はもしかしたら・・・って感じもするけれど・・・)


彼女が私に向けた鋭い目。

腕を組み、私から遠ざけるように彼を引っ張っていったことを思い起こすと、アリサちゃんは賀上くんを好きなのでは・・・と思ってしまう。


(・・・とはいえ、これ以上は勝手な憶測になるもんね・・・)


アリサちゃんについて私はほとんど知らないし、ここから先は、何も言わないでおくことにする。

と、そこに、マサさんがビールと3種類の前菜がのったお皿をテーブルに順に運んできてくれた。

「はーい!お待たせ~、とりあえずビールと、これ、食べててね~」

「ありがとうございます」

食欲を誘ういい匂い。

そして、美味しそうな料理に目がくぎづけになる私。
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