春の花咲く月夜には
それから、駅前のカフェでお茶をして、夕食は、賀上くんが予約しておいてくれたイタリアンのお店で食事した。

カフェで食べたケーキも紅茶もおいしかったし、レストランの食事もとてもおいしくて、すごく楽しい時間だった。

賀上くんと一緒にいると、時間はすぐに過ぎてくし、何度もドキドキしてしまう。

やっぱり私は彼を好きだと思ったし、この気持ちは揺るがなそうな感覚だった。


ーーーーーだけど、ふと。


亜莉沙ちゃんの言葉を思い出し、不安な気持ちに襲われる。

賀上くんの好意が思わせぶりだとはもちろん思わないけれど、だからこそ、どうして私なんだろう、私でいいのだろうかと、考えずにはいられなかった。


(だって、きっと『葉月さん』は綺麗で華やかな人だったんだと思うから・・・)


亜莉沙ちゃんの、あの話し方から察するに。

葉月さんは、私のような平凡なタイプではなくて、モデルのように目を惹く女性なのだろう。

考えてみれば、賀上くんはかっこいいし優しいし、ギターも弾けて、現に、ファンの女の子たちだって沢山いるんだ。

それなのに、どうして私なんだろう。

いったいどこを気に入ってくれたんだろうと考える。

もし、賀上くんが私に好きだと伝えてくれたとしても、それを受け入れていいのかどうかもわからなかった。


(賀上くんの横に並ぶなら、もっとかわいくて・・・、綺麗で華やかな人の方が絶対似合うに決まってる・・・)


そんなふうに思うのは、きっと、私や亜莉沙ちゃんだけじゃない。

ファンの子たちも、私がもし彼の彼女になったりしたら、がっかりしたり、それこそファンを辞める子だって出てきてしまうかもしれない。


(賀上くんはアイドルではないけれど・・・。そんなことがあったりしたら、それこそつらい・・・)


そして、もうひとつ。

「葉月さんの代わり」と言っていた、亜莉沙ちゃんの言葉も気にしてる。

賀上くんは、まだ、葉月さんのことを忘れられないでいるのだろうか。

それで、誰か「代わり」を探してた?

私は「代わり」になる存在?

・・・そんなふうに、彼が葉月さんの代わりとして「誰か」を探す人だとは、もちろん思えないけれど。

だけどもし、万一そうだとしたらって、どうしても不安が拭えなかった。







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