春の花咲く月夜には
(ん・・・?)


なんとなく視線を感じ、車内を軽く見渡した。

すると、あちこちに座っている女の子たちが、賀上くんをチラチラ見ていることに気がついた。


(・・・普通に目を惹く容姿だし、ギターも背負っているもんね・・・)


ただ、「背が高い」とか「かっこいい」って、何気なく見ているだけかもしれないけれど。

もしかしたらタレントさんかも・・・と思ってしまうオーラがあるし、ここらへんの地域なら、「T's Rocket」のファンの子だっているかもしれない。


(・・・どうしよう・・・。私が隣にいて平気かな・・・)


急に不安になってくる。

女の子たちは賀上くんを見ているだけで、私のことは視界に入れていないと思うけど。

「もしかしてあの人が彼女なの?」「似合ってない」って言われているような気がして私はとても不安になった。


(考えすぎかもしれないし、逆に自意識過剰なのかもしれないけれど・・・)


それでも、不安を無いものになんてできなくて、私は、女の子たちからなるべく顔が見えないように、窓の外に視線を移した。

「・・・心春さん」

賀上くんが、窓越しで私に視線を合わせて呼び掛けた。

私は少し、目線を上げる。

「・・・、そういえば、その・・・・・・、あれから、あの先生から連絡ってあったんですか」

問いかけられて、私は途端にドキリとなった。

今日一日彼といて、元村先生のことはすっかり忘れてしまっていたし、賀上くんの口から先生の話題が出るとは思わなかったから。

だけど、そうだ。

あの日・・・、賀上くんは、先生に「心春さんに連絡しないでください」と言ってすぐに私を連れ去った。

その後どうなったかと気にすることは、当然の流れかもしれない。

「・・・・・・、うん。メールがあって・・・、会うかどうかは、保留にさせてもらっているけど」

素直に話すべきなのか、どうしようかと迷ったけれど、はぐらかすのも嘘をつくのもなにか違うと思ったし、私は事実を彼に伝えた。

すると彼は、「そっか」と、静かに一度目を伏せた。
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