エリートSPはようやく見つけたママと娘をとろ甘溺愛で離さない
 その和に、しっかり前を見て運転しながら、和臣が言う。

「今度、ドライブにも行こうか」

「いきたーい!」

 お店は都内ではなく、埼玉県内だった。

 街中のほうへ出て、ただ、繫華街に入るのではなく、小さめの路地に入ったところで停まった。

 予約したのは小さな料亭。

 和はこんなお店が初めてなのだ、目を見張っていたけれど、梓もほとんど同じ気持ちだった。

 こういう高級店はあまり慣れていない。

 和を宿す前だって、それほど行ったことはなかったのだ。

「予約している七瀬です」

 三人で店に入り、和臣がスタッフにそう告げる。

 すぐに奥の席へと案内された。

 通された席は和室で、完全個室であった。

 和はもう四歳とはいえ、まだまだ幼児なのだ。

 ついつい声が大きくなったりしてしまうことも考えられたので、有難いことであった。

「じゃあ、乾杯しよう。……パパと、ママと、和。三人の未来に乾杯」

 飲み物は全部ノンアルコールだったけれど、和臣の音頭でカチンと合わせたみっつのグラス。

 軽快で、綺麗で、未来のスタートとお祝いに相応しい響きであった。
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