エリートSPはようやく見つけたママと娘をとろ甘溺愛で離さない
今度こそ、なにも言えなくなった。
凍り付くどころではない。
心が完全に無になった。
頭の中も同じだった。
思考がまったく動かない。なにも思い浮かばなかった。
「そういうわけだから。もうかずくんに会わないでね。婚約については私のほうで、改めて進めるから」
がたん、と椅子が鳴る音すら、異世界で聞こえたような気がした。
美穂は伝票を取り上げて、席を立った。
隣に置いていた黒いエナメルのブランドバッグを取り上げる。
「じゃあね。ここは払っておくから」
飲み物なんてひとくちも飲まなかったというのに、美穂はヒールの音をかつかつと響かせて、去っていく。
お会計を勝手にされることも、去られてしまうことも、梓はなにも反応できなかった。
ただ、アイスコーヒーの黒い水面を見つめるしかできなかった。
「お客様? 体調でもお悪いでしょうか……?」
数十分後。
見かねただろう店員に声をかけられて、やっとはっとした。
そのときにはもう、アイスコーヒーの氷は全部溶けてしまい、美しかったブラックのコーヒーはぐだぐだの色になっていた。
凍り付くどころではない。
心が完全に無になった。
頭の中も同じだった。
思考がまったく動かない。なにも思い浮かばなかった。
「そういうわけだから。もうかずくんに会わないでね。婚約については私のほうで、改めて進めるから」
がたん、と椅子が鳴る音すら、異世界で聞こえたような気がした。
美穂は伝票を取り上げて、席を立った。
隣に置いていた黒いエナメルのブランドバッグを取り上げる。
「じゃあね。ここは払っておくから」
飲み物なんてひとくちも飲まなかったというのに、美穂はヒールの音をかつかつと響かせて、去っていく。
お会計を勝手にされることも、去られてしまうことも、梓はなにも反応できなかった。
ただ、アイスコーヒーの黒い水面を見つめるしかできなかった。
「お客様? 体調でもお悪いでしょうか……?」
数十分後。
見かねただろう店員に声をかけられて、やっとはっとした。
そのときにはもう、アイスコーヒーの氷は全部溶けてしまい、美しかったブラックのコーヒーはぐだぐだの色になっていた。