内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
自動販売機や給水機、ベンチシートと丸テーブルの席もあって、昼時はランチをする社員で満席になるけれど、十四時半の今は誰も使用していない。

コーヒーを飲もうと誘われたが、和樹は甘党だ。

卓也は自分用の無糖のアイスコーヒーと和樹の分のアイスココアを買い、丸テーブルにふたつのカップを置いた。

「果歩ちゃんだっけ。あれから連絡ないのか?」

交際中はいささか浮かれていたため、和樹に果歩の写真を見せ、『可愛いだろ』と自慢した。

フラれてしまい実現しなかったが、雰囲気のいいフレンチレストランを予約して、そこでプロポーズを計画していることも話していた。

友人の問いに頷いてカップに口をつけた卓也は、果歩の弾けるような笑顔を思い出して胸を痛める。

(指輪も買ったのにな。プロポーズできずに終わってしまった。もう二度と果歩には会えないだろう)

十月に卓也は海外事業部への異動が決まっている。

行き先はニューヨークのマンハッタンで、アメリカの巨大な製薬会社と共同でワクチン開発を始める。

その指揮を執るのが卓也で、おそらく五年以上、向こうに腰を据えることになるだろう。

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